第6章 死神編【駐在任務編】
「ソレが藍染の実験体だったとしたら絶対にゆうりとの戦闘を見てるだろ?アイツは頭がキレる。お前が回帰能力を試したのも多分見てんだろ。その能力が使えるのはハッチ位だ。俺らと接触してる事は察すると思うぜ。」
「まァ、それが無くても元々勘づいとったとは思うけどな。ラブとハッチは先に戻ってリサ達に伝えて来てや。」
「はいデス。」
「おう。」
平子の指示で有昭田と愛川はアジトから去った。安易にこちらで身に付けた力を使おうとした浅はかな自分の責任だ。彼らを止める事は出来ない。
残されたゆうりは神妙な顔で俯き平子はそんな彼女を見下ろし頭を撫でる。
「…そない落ち込むなや、アジトの場所を変えるだけや。全く会えんわけとちゃうやろ。」
「そうだけど…今まで賑やかだった分これから1人になると思うとちょっと寂しくて。」
「アホみたァに家デカいもんなァ。…せや、ゆうり!知っとるか、来週クリスマスやで!!」
「え?あ、うん、知ってるけど…。」
「オレとデートしよ。」
彼はいつもと同じ様にニンマリと唇に弧を描かせ笑ってゆうりの両手を掴む。突拍子も無い誘いに彼女は目を丸めた。
「な、なんで?」
「しばらく会えんし、最後くらいちゃーんと2人で過ごしたいやん。夏はアイツらに邪魔されたったしなァ。」
「…うん、良いよ。」
「っしゃ!約束やで。午前中に迎えに行くから、しっかり準備しとってや。」
多分彼なりの気遣いなのだろう。本気でゆうりとただ単純に逢引がしたい、というのも有るのだろうが。そんな彼の誘いを断る理由も無い。ゆうりは漸く笑顔を見せ頷いた。残り約2年。長い期間では有るがたった独りで、ただなんの見返りも楽しみも無くこの街を守る事になる。しかし、不安を抱え過ごした浦原の帰りを待つ日々と比べたら耐え難いものでは無い。最後の約束を取り決めた2人は、手を繋いだまま家へと戻るのだった。
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