第6章 死神編【駐在任務編】
季節は過ぎ、冬が訪れた。都会に雪が降ることは殆ど無かったが、それでも当然の如く寒い。ゆうりは事件の真相を知って以来猿柿だけで無く平子や六車には斬術を、白打に関しては久南と鍛錬する時間が増えた。鬼道は有昭田から指導を受けているがどうやら彼女自身、回帰能力が備わっていたらしく最初は1時間にミリ単位も変わらなかった破損物を徐々に回帰能力を使って直せるようになって来た。
そして今日も、元平子達のアジト地下に有昭田、平子、愛川と共に来ている。
「壊れる前に戻すのって、思ってたよりずっとコツが要るんだね…。」
「破道や回道と違って難しいのは確かデスネ。それにゆうりサンの場合、まだ能力が目覚めたばかりデス。慣れれば戦闘時でも充分使えるようになりますヨ。」
「実戦で使えるようになったら出来ることが増えるね。後は卍解を会得したいんだけど…中々屈服が難しくて。」
「なんや、まだ卍解使えんかったんか。」
「俺もてっきり使えるのかと思ってたぜ。」
「蘭がね、あんまり卍解を使わせたくないからって本気で斬り掛かって来るし…鬼道も、技も一切使えない純粋な斬り合いで屈服させなきゃならないから勝てないの。」
ゆうりは腰に携えた斬魄刀を撫でた。当然刀は彼自身なのだから自分より扱い方を知っている。現実世界に具象化させ、屈服を試みたが流石に一筋縄ではいかない。
「そもそも鬼道系の斬魄刀やのに斬り合いで勝負っちゅーのも変な話やなァ。」
「ね、使わせてくれても良いのに。まぁ私は白打とか斬術はあんまり得意じゃないから練習するのに良いんだけど…。」
そんな会話をしている時、不意にとても強い霊圧が肌を刺した。背筋を這うような悪寒に冷や汗が頬を伝う。けれど伝令神機は何故か鳴らない。周りを見ても平子達は普段と変わらぬ顔で平然としている。
「何…虚…?」
「虚?伝令神機鳴っとらんやんけ。」
「え…!?みんな感じないの…!?」
「虚の霊圧か?何も感じねェぞ。」
「ワタシも特に…。」
霊圧を消せる、という訳では無さそうだ。何せ自分は虚の霊圧を感じているのだから。
…誘い出されている?
ゆうりは困惑したが、ここで考えても仕方無い。この霊圧で見境なく暴れられたら困る。自分が目的なのだとしたら、今ここに居る彼らを巻き込む訳にもいかない。