第6章 死神編【駐在任務編】
通話終了ボタンを押すとゆうりは平子の表情を盗み見た。怒っているというよりも何かを考えているような表情に感じる。…一体今の会話を聞いて彼は何を思っているのだろうか。
「…なァゆうり。市丸と今どんな関係なん?」
「どうともないよ、今も昔も変わらず友達。」
「ほんまにそれだけか?普通自分の部下でも無いヤツにわざわざ通話繋いだりせんやろ。」
「ギンは元々いたずら好きだし……もしかして、疑ってる?私がギンと何か必要以上に深い繋がりが有るんじゃないかって。」
平子はハッとしてゆうりを見る。彼女はただ眉を下げて寂しそうに笑う。直ぐに訂正の言葉を述べようとするがそれよりも先に義魂丸を飲み込んだゆうりは死神化して伝令神機を手に取り窓枠へ足を掛けた。
「…いや、ちゃうねんて。待ちや、ゆうり!」
「ごめんね、ちょっと1人で考えたいの。」
掴もうと伸ばした手は何かに触れることすら無く空振る。ゆうりはそのまま窓から飛び出て行ってしまった。部屋に残された平子はポカンと口を開いたまま固まる。
…あかん、やってしもた。
何であんな突き放すような聞き方をしてしまったのだろうか。元々ゆうりと市丸は昔からある程度仲が良かったのだし、己より彼女の傍に居た期間はずっと長いのだ。そもそもゆうりに好意を持っている市丸が、連絡を取りたがる事は別に不思議ではない。冷静になれば直ぐに分かるはずなのに。無意識に嫉妬心が膨らみ彼女自身を疑う様な口振りとなってしまった。
平子は自嘲じみた笑みを浮かべ前髪をくしゃりと握る。
「…最悪や。」
何事も中途半端が1番あかん事は分かっとる筈なんやけどなァ。その為にこっちでコソコソ力付けて備えとるっちゅーのに。オレの私情で全部駄目にさせるわけにはいかん。
まだ早いと思うとったけど…ゆうりの立ち位置、白黒付けさすか。黒だった場合は……ここにはもう戻れんのォ。
平子はベッドから立ち上がり1度リビングへと向かった。
一方、ゆうりはといえば、疑われた事に対して特に塞ぎ込む事も無くいつも通り魂葬の仕事を進めていた。
「ふぅ、順調順調。今日は子供が多いな…。」