第6章 死神編【駐在任務編】
窓から差し込む日差しに目を覚ます。いつもより柔らかく感じる布団は何故かやたらと狭い。布団の中に何か居る?ゆっくりと瞼を持ち上げれば隣には好意を抱いている筈の女が寝ていた。
「…ア?なんでオレゆうりの部屋に…っちゅーかあったま痛…。」
平子は上体を起こしズキズキと痛む頭を抑え昨日の記憶を辿る。
そういや昨日はひよ里に酒無理やりぶち込まれて…あー、その後の記憶無いな。まだ眠っとるゆうりは穏やかな寝息を立てとるし…互いにちゃんと服着とんな。何か酷い過ちを犯した、というわけでは無さそうや。流石に酔った勢いでー、なんて事になっとったらえらい情けないわ。
「綺麗な顔やなァ…ほっぺ柔らか。」
あどけない寝顔をマジマジと見詰め、指の背で真っ白な頬を撫でる。シミひとつ無い肌は柔らかく、滑らかだ。指先でふにふにと軽くつついていればふと視線は僅かにはだけた胸元へ移った。喉元にハッキリと残る赤い歯型。まさか、と平子は頬を引き攣らせる。
「げ、これオレか…?むっちゃ痛そうやんけ…。」
「本当だよ…実際痛かったんだから。」
「なんや起きとったんか。おはよーさん。」
「おはよう。」
ゆうりは片目を擦りながら身体を起こす。大きな欠伸1つ漏らしてから両腕をグッと伸ばした。長い髪を耳に掛け、まだ少し眠そうな目で彼を見詰める。欠伸をしたせいか少し潤んだ瞳と、無防備に色香を撒く姿を見て平子はドキリと小さく胸を打たれた。
「どうせ、ひよ里ちゃんにお酒飲まされたせいで昨日の事覚えてないんでしょ。いいよ、怒ってないから。」
「返す言葉も無いわ。次は起きてる時につけたる。」
「そうじゃないでしょ。」
「なんならオレに付け返すか?それで相子やん。」
平子が冗談めいた様子で襟元を指先で軽く引っ張り喉を晒すとゆうりは唇をへの字に曲げてじいっと彼を見詰めた。ふと口角を吊り上げて笑うと、片足を持ち上げ平子に跨り両手を首の後ろへするりと回し上体をピタリと密着させる。本気でゆうりが挑発に乗って来るとは思っても居なかった平子は目を丸めた。
「私ならやらないと思った?」
「…思っとったけど嬉しい誤算ならオレは大歓迎やで。」