第6章 死神編【駐在任務編】
今は居ない2人の話で会話が持ち切られる中、暫くして平子が帰宅した。両手には大きな紙袋が有り、どうやら2着分浴衣が用意されている様子だ。
「なんやお前ら賑やかやんけ。なんの話ししてん?」
「あんたがゆうりにフラれるかフラれ無いかで賭けとった。」
「そりゃフラれない一択やろ!」
「逆や、満場一致でフラれるに集まったで。そん時はゲラゲラ笑うたるわ!!」
「覚えとけよオマエら…!!」
「何言うとんの、寧ろ2人でデート出来るように気ィ使ったあたしらに礼の1つ無いんかい。」
「そうそう。楽しみにしてます、つってたぞ。」
「なんや帰って来たんか。もう部屋居るん?」
「夜の花火の為に今仕事終わらせて来るってさ。良かったね。」
「…へぇ、わざわざ時間空けるために今行ったんか。」
「何ニヤついてんねやハゲシンジ。キモイで。」
「じゃかしいわ!」
平子は口元を手で覆い隠した。己の為か花火の為か真意は分からないが時間を空けようと、普段は暇な時間である筈の今仕事に出ていくとは健気で可愛らしい。しかも今回外に出るのは二人きりだ。現世で再会したは良いが、ゆうりは夜、平子は昼に仕事をしていた為あまりゆっくり話す時間も無かった事もあり余計楽しみに感じる。
会うことのなかったこの数年で彼女がどう生活し、成長したのかを聞く良い機会だ。
「………オマエら、邪魔ァすんなよ。」
「オマエの恋愛沙汰に興味無いわボケ!」
上機嫌で彼は部屋へ戻る。
日が落ち始めた夕方頃、ゆうりは帰って来た。すっかり疲れた様子で義骸を着てひとまず息を着く。
「ふぅ…今日は逃げる霊が多かったな。花火見たかったのかなー。」
ベッドへ仰向けに倒れ込み天井を見上げる。この後、真子と外に出るのか…。そういえばのんびり話すのは久しぶりだった気がする。ゆっくりと目を閉じる。彼は昔から己を気に掛けてくれた優しい友人だ。先日矢胴丸の言っていた通り今の彼の言葉に嘘はきっと無いはず。勿論他の全員も然りだ。少しずつでいい、失った時間を取り戻したい。そしてこの3年間で、私の信じるものを自分自身で決めるのだ。
決意を胸に瞼を持ち上げる。平子の部屋へ向かおうとした所で自分の部屋がノックされた。
「ゆうり、入るで。」
「リサさん?どうぞ!」