第6章 死神編【駐在任務編】
「後なァ…ゆうり、この前近くの街の祭りに来てたやろ?」
「うん、何で知って……あ、霊圧…。」
「霊圧高まった時あったやん。それで気付い向かっててん、オレも喜助も。着いた頃にはもうおらんかったけど。」
「喜助さんも!?」
「…喜助の名前聞いただけで喜び過ぎやろ。」
「いててて、ごめん…。」
片頬を抓られゆうりは眉を下げ首を横に振った。彼は深く溜息をつくと彼女の肩へ顎を乗せる。
「…市丸と居ったやろ。アイツは気ィつけや。」
「……待って。それって、どういう意味…?」
「あんま近付いたらアカン。信用すな。痛い目見るで。」
平子の声は至って真剣だった。けれどゆうりは彼が何故そんな事を言うのかが分からない。市丸は友達で、何かある度慰めてくれたり近くに居てくれた。そんな彼が何故、信用するなと言われてしまうのかが理解出来ない。ゆうりは困惑し、言葉に悩む。
「…そんな、ギンは友達だよ。」
「…ほんまにそうやとえぇんやけどな。オレもそろそろ部屋戻るわ。」
パッと手を離した平子はゆうりを残して部屋から出た。扉を閉めると彼女は顎に手を当てて彼の言葉を反芻する。一体どういうつもりで、どういう意味で言ったのだろう。平子の事は殊更信用している。しかし市丸は市丸で優しさに嘘を感じたことは無い。以前胡蝶蘭と話した内容が頭を過ぎる。……果たして裏切りは一体どちらになるのだろうか。現時点で決め付けることは出来ない。ただ、頭の中が混乱しゆうりはベッドの上で膝を抱えた。
一方、平子は部屋の扉の横でヤンキーのような座り方をして待っていた猿柿へ視線を落とす。
「盗み聞きたァ趣味悪いでひよ里。」