第6章 死神編【駐在任務編】
「真子さん?どうぞ!」
部屋に入った彼はそのまま後ろ手で鍵を閉めるとベッドに座り服を畳んでいたゆうりの隣へと腰掛けた。彼女は1度手を止め横に座った男を見詰める。平子は口角を吊り上げ笑い己の唇へ人差し指を宛てた。
「今から話すのは大事な話や。ええか?」
「は…はい。」
「さっき色々オレらがこっち来た経緯を話したったけど、全部は教えとらん。一気に言われた所で多分受け入れられんと思うしな。…まぁ、ゆうりは聡いしなんとなく想像しとるとは思うけど。」
「……うん。」
「それとオレらがここに居ることは絶対に秘密にしてや。」
「わかった。」
真剣な顔で首を縦に振るゆうりとは正反対に平子は浮かべる笑みの色を濃くすると徐に彼女の肩へ手を添えた。大きな目を丸めて彼を見詰める。
「よいしょっと。」
「…え、きゃっ!」
平子は彼女の肩に添えた手を軸に身体を反転させ両足を跨ぎ、ベッドへと体躯を押し倒す。ギシリとスプリングの軋む音と共に突然視界が天井と彼の顔のみとなったゆうりはポカンと唇を開く。
「真子さ…」
「アカンでー、こない簡単に男部屋に入れたら。」
平子の両手が顔の横へ着き整った顔立ちが鼻先が触れそうな程寄せられる。思わずゆうりは息を飲んで顎を引いた。刹那、彼の指先がスルリと耳介を滑り肩が跳ねる。
「く、擽ったい…!」
「いやァ、思った通りえぇ女になったな。」
「…ありがとう。真子さんは髪切ったんだね。」
「せやで、男前やろ。」
「うん、似合うよ。かっこいい。長いのも良かったけど、今の髪型も好き。」
ゆうりは瞳を細め緩慢な動きで手を伸ばし平子の髪をそっと撫でた。彼は彼女の仕草に瞬きを繰り返すなり、短く吹き出す。
「ふはっ、上手いこと言うようになったなァ。どこで覚えたん。」
「えぇ、思った事を言っただけだよ。」
平子は身体を起こし隣へ座り直すと彼女の手を引き己の膝へ乗せた。片腕を腹へ回し緩く抱き締め隻手でゆうりの長い髪をそっと梳かす。
「せや、ずぅっと思っとったんやけど、さんは要らん。後ラブ達もあだ名で呼んでやりや。あいつらもオレももう隊長でも副隊長でもあらへん。上下関係なしやで。」
「年上だし尊敬してる人達に変わりはないんだけど…本人が良いって言ったらそうするね。」