第6章 死神編【駐在任務編】
心の中にぽっかり空いたままだった穴が少しずつ暖かく埋まっていく様な気がする。ゆうりが涙を流している間、平子はただ強く抱き締め続けた。最後に顔を合わせた日から随分成長したものだ。あどけない少女だった筈の彼女は年相応な体になり…何より、顔付きが変わっていた。何も知らない無知で無垢な子供のような顔をしていたのに今では何かやるべき事を見付けた様な決意に満ちた目をしている。
しばらくして、ゆうりは泣き声が止んだ。しかし顔を上げず言葉も発しない彼女に怪訝な顔をした平子はゆうりの体をそっと離す。
「いい加減泣き止ん…え、寝とるやんけ!」
泣き疲れたのか、すやすやと規則正しい寝息を立てているゆうりに思わず驚愕した。いやまさか寝るとは…。無防備にも程が有るやろ…。
ここで叩き起す訳にもいかない。平子は頭を掻いた後、致し方無く彼女の身体を再び軽々と抱き上げた。
「全く、ほんまいい度胸しとるわ…。中身はまだまだ子供やな。それに、安心し過ぎや。オレがオマエの敵になってたらどないするっちゅーねん。」
深く長い溜息を吐き出す。しかし、普段何処か冷静だった彼女が泣き疲れるまで涙を流す程に己との再会を喜んでいるのだと思うと、悪い気はしない。平子は静かに眠るゆうりを抱えたままその場を去るのだった。
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