第6章 死神編【駐在任務編】
「ちょ、待ってや!少しくらい話聞いてくれてもええやろ!」
「…もしかして私?何で見え………」
引き下がらない声がゆうりの肩をがしりと掴んだ。漸く振ると、視界に映る綺麗な黄色の髪を見て目を見開き言葉を失う。スラリとした細身の身体、少し気だるげな瞳。髪の長さは…随分短くなっていたが彼女はこの男を知っている。何も言えずはくはくと唇を小さく開閉させれば目の前の彼は昔と変わらない顔でニンマリと笑った。
「…オレの話し聞く気になったか?ゆうり。」
「ッ……真子さん!!」
名前を呼ばれるとゆうりは弾かれたようにその場を蹴り彼へと飛び付いた。触れる、本物だ。自然と瞳から大粒の涙が溢れ出る。ずっと探していた、ずっと会いたかった。勿論彼だけでは無い。けれど今は平子に再び会えた事がただ嬉しかった。平子は笑いながら彼女の体躯を抱き締め背中を優しく擦る。
「大きくなったなァ。それにえらい美人になりよって。やっぱオレの目に狂いは無かったわ。……死神になったんか。」
「うぅっ…ぐす…皆に会いたくて、死神になったのに、殆ど居なくなってて…凄く寂しかった…!!」
「おーおー…せやろな…。」
「どれだけ調べても死んでしまったのか生きてるのかも分からなくて…!」
「…なんや、そっちではオレらの事ご丁寧に隠されとるのか。」
「オレら、って事は皆生きてるんですか!?」
「まァな。オレもラブもひよ里もローズもみーんな生きとる。兎に角ここではアカンやろ。オレについて来や。」
「…待って、まだ涙止まらない…。」
平子の胸板へ顔を押し付けゆうりは袖で何度も涙を拭いた。しかしいくら拭いても、再び顔を合わせる事が出来た安心感からかとめどなく涙は溢れて来る。平子は己の腕の中で子供のように涙を流すゆうりに瞳を細め、徐に彼女の体を横抱きにした。突然足が地から浮く感覚にゆうりは固まったが彼はそのまま道のど真ん中から一軒家の屋根上へと飛び上がる。
「見えとらんでも道のど真ん中で泣かれるんはなんか嫌やし、ここで泣きや。止まるまで抱き締めたるわ。」
「…相変わらず、優しい。」
「惚れたか?」
「すぐそういう事言う…。」