第5章 死神編【中編】
ゆうりは即座に霊圧を探ると生徒達を連れて街を歩いた。到着した先では小さな女の子が道路脇で膝を抱えて蹲っている。行き交う人間は彼女に見向きもしない。それは彼女が生き物ではないからである。
「さてと…あいうえお順でやってもらおうかな。まずは草冠くん。」
「あ…はい!」
呼ばれた男、草冠が前に出る。緊張した面持ちで彼女に近づくと女の子は顔を上げた。まだ小学生低学年程だろう。隣に花が飾ってあるのを見る限り、ここで亡くなった可能性が高い。
「…お兄ちゃん、私が見えるの…?」
「そうだよ。君はここで…命を落としてしまったんだね。」
「……死んでないもん。だってあたし、ここに居る。死んだらお星様になるんだよ?なってないもん。だから死んでない。」
泣きそうな顔で首を横に振る彼女に草冠は心を痛めた。整の霊の中には子供から大人まで…そして死因も様々だ。簡単に魂葬されてくれる人もいればごねる人も逃げる人も居る。
草冠は彼女に合わせて体を屈め、優しく微笑んだ。
「…君がここで待ち続けても、お母さん達は君に気付くことは出来ない。ここに居たら永遠に会えないんだよ。」
「そんな…。」
「今すぐでは無いけれど、いつか必ず会うために君は尸魂界に行かなければならない。そこへ行けばきっと友達も出来るし、独りぼっちじゃなくなる。だから…安心してくれ。」
「ほんと…?誰もあたしを見てくれないの。そこに行ったら友達出来る…?あたしの事見てくれる?パパとママに会える?」
「あぁ、約束するよ。必ずいつかパパとママに会える。」
斬魄刀を掴み柄の先端を彼女の額にポンと宛てた。特に痛がる様子もなく、女の子は涙を流しながら手を振り消えていく。
無事魂葬を終えた草冠はどっと息を吐いた。辺りの生徒からはぱちぱちと疎らな拍手が起こる。
「魂葬って簡単だと思ってたんですけど…心に来るものが有るんですね…。」
「その通りだよ。中には逃げたり殴りかかって来る人も居るからその時は無理やり判を押してもいいけど…力み過ぎないようにだけ注意して。魂魄痛がるから。」
「痛がるのかよ…。」
「うん、理由はよく分かんないんだけどね。とにかく、草冠くんはパーフェクトだったよ!この調子で皆頑張りましょう。」