第5章 死神編【中編】
「3人とも久しぶり、元気だった?」
「はい!」
「珍しいですね、特別講師ですか?」
「あれか、鬼道か?」
「ううん、現世の魂葬だよ。」
サラリと答えれば3人も矢張り他の生徒同様の反応を見せた。彼らは他の子達と比べても特別怖い想いをしたはずだ、無理もない。ゆうりは周りの空気が重くなっていくのが不思議で仕方なかった。彼女は片手を持ち上げるなり檜佐木、蟹沢、青鹿の背中をそれぞれ思い切り叩く。
「いっ…!!」
「ぐっ…!」
「痛い!…ゆうりちゃん!?」
「なんで皆そんな暗い顔してるの?あの事件はもう終わったでしょ。誰も死んでないのにいつまで引き摺ってるのよ。私達は学生じゃなくて死神なんだよ?とっくに本物の虚相手にしてるんだから、怖がる事なんてひとつもない。」
「でもよ…いててて!」
「でも、じゃないの。上が迷うと下も迷う、って海燕副隊長が言ってたわ。大丈夫だよ、皆それぞれ強くなったもん。私は3人のこと信じてるよ。」
言い訳の言葉を並べようとする檜佐木の耳を摘み引っ張る。直ぐに顔を横に振られた為、離した後ゆうりは腰に手を宛て鼻を鳴らす。
「染谷さんが1番男前だ…。」
「かっこいい…。」
生徒達から感嘆の声が上がる。叱咤された3人は呆気に取られたが程なくして顔を合わせ笑い合う。
「お前が1番重症だったってのにそう言われると俺達が随分情けなくなるな。」
「そうだね…。私も3人の事信じてる。だから今回は大丈夫だよ。何があっても対処出来る。」
「あぁ。ゆうりさんに頼るだけじゃねえ。」
息巻く3人にゆうりも安心して笑顔を見せる。
彼らにはたまたま浅田から依頼が来たと話したが、実際この授業を受け持たせて欲しいと頼んだのは他でもない、ゆうりだった。死神になってからというもの、3人の話や噂は聞いていた。どうしてもこの1件が…特に顔に傷を負った檜佐木は心に深く残った様で東仙隊長からも話を伺っていた。そこで、過去のトラウマや恐怖を捨て去る為、この講義をかって出たのだ。
「あの時の恋次達はかっこよかったね。まさか戻って来る生徒が居るなんて思っても無かったよ。」
「でも俺らのお陰で檜佐木さんは無事だったろ?」
「そうね、本当に感謝してる。恋次もイヅルも桃も、きっと強い隊士になるよ。」