第5章 死神編【中編】
ドキドキいってる?……気がする。いやでも多分気の所為だ。行き場のない手を降ろすと腰へ添えられた手に力が込められ密着が深まった。
「なぁ、ゆうりからキスしてくれん?」
「え、なんで?」
「たまにはええやん。するまで寝んし寝かせんで。」
「……したらちゃんと寝てくれるわけ?」
「勿論や。」
自分から、口付けなどした事が無い。そもそもどうやってするんだっけ…。吐息が触れ合う程距離は近いのに、どうすれば良いか分からない。目の前の男は今もニコニコしている。至極楽しそうな表情だ。
ゆうりは暫し悩んだ末、上体を少し起こし彼の頬へと口付けた。そして直ぐ逃げるように体をずり下げ鎖骨辺りに額を押し付け顔を隠す。
「これでいいでしょ。おやすみ!」
「…確かに、口とは言わんかったしなぁ。今日はこれでええわ。おやすみ、ゆうり。」
思っていた場所とは違う箇所への口付けに一瞬ポカンとしたが逃げるように引っ込んでしまったゆうりに市丸は喉を鳴らし笑った後、頭を下げて彼女の旋毛へ口付けた。
それから程なくして互いの静かな寝息が室内へと響き眠りについたのだった。
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