第5章 死神編【中編】
「詳し過ぎません?どこからそんな情報を?」
「現世に行った時の報告書や学生時代の成績表だよ。それと…流魂街の森で鍛錬している所を少し見させて貰った事がある。」
「え!?」
「はは、驚いたかい?それ程君に興味があるという事だ。最初推薦状を断られた時はとても残念だった。」
「あ…すみません…。」
「謝らなくていい。染谷くん自身、どういう死神になりたいのか自分なりの像があったのだろう?」
「はい。味方を守れる死神になりたいんです。何があっても、どんな事からも守れる死神に。その為には回道もしっかり身につける必要があったので。」
「良い心がけだ。…さて、そろそろ僕もここを出よう。先程も言ったが…副隊長になる話、考えておいてくれ。」
「…分かりました。真剣に考えさせて頂きます。」
再び深く頭を下げるゆうりに藍染も軽く頭を下げて部屋を後にした。彼が去ってから彼女は顔を上げ腰に携える斬魄刀をキュッと握る。考えの読めない人だ。けど、一瞬だけ寂しそうな瞳に見えたのは何故だろう。
「…勘違いかな。私も帰ろっと。」
大切な書類を鍵の掛かる引き戸に仕舞いゆうりも後から部屋を出る。隊舎を出た所で後ろに感じた気配にパッと振り返ると、月の光にあてられて輝く銀色の髪を見た。ニンマリといつもの様に貼り付けた様な笑顔を浮かべる市丸。彼を見て咄嗟に左手の裾を掴み手を隠した。
「ギン!」
「驚かそ思ったのに。よう気付いたなぁ。」
「そう何回も驚かされないよ。どうしたのこんな時間に。白哉なら帰ったよ。」
「こっちの台詞や、こんな時間まで藍染隊長と何話してはったん?」
「いや、そもそもなんで藍染隊長と話してる事知ってるの?怖いんだけど…。」
「酷い言われようや…。たまたまゆうりに会いに来たらこっから藍染隊長が出てくのを見ただけやよ。キミんとこの隊長居らんのならゆうりと話しとったって事やろ。」
「まぁそうだけど。ギンはなんの用事?」
「これといって無いよ。ただゆうりの顔見に来ただけ。これから帰るんやろ、ボクん家泊まって行きや。」
「えぇ、着替えも何も無いもの。」
「着物はボクの貸したるわ。肌着は開いてる店で買うたらええ。ほな行こか。」