第5章 死神編【中編】
「はい。けれど戦うことは苦手では無いのでそこまで困る事は有りませんよ。駐在任務もまだですし。」
「そうなのか?ならこれから入るかもしれないな。」
「現世は昔と比べて新しいものも増えてますしちょっと楽しみです。藍染隊長は最近いかがですか?」
「いつも通りだよ、隊士は特に負傷者も無く至って平和さ。」
藍染は持っていた湯呑みを机に戻す。ゆうりは茶菓子に持ってきた落雁を1粒摘み口に運ぶ。彼は穏やかな笑顔を見せたまま口を開いた。
「…ところで、また随分霊力が高まっているらしいじゃないか。それが新しい制御装置だろう?」
「よくご存知ですね。仰る通りです。」
「知らないのかい?噂になっているよ。君についに婚約者が出来たんじゃないか、って。」
「う、噂…?」
「あぁ。染谷くんを慕う死神は多いからね。皆敏感らしい。それより…2つそれを着けていないと、制御が難しい状態なのかい?」
「…まぁ……そうなります。自分では抑えてるつもりでもちょっと想定しているより威力が出てしまう事があって。」
「そうか…矢張り四席で収めておくのには惜しいな。」
スっと彼の手がゆうりへ向かい伸びてきた。大きい掌が彼女の長い髪を掬い持ち上げられる。細く柔らかな女性特有の髪の感触を楽しむようにそのままスルリと毛先まで撫で下ろした藍染はゆうりの瞳を見詰めた。
「藍染、隊長…?」
「僕の副官を務める気は無いかい?」
「副官……?私が?」
「君は人望も有るし実力も高い。充分に任せられると思ってね。」
「そんな、買い被り過ぎですよ。」
「これでも人を見る目には自信が有るんだよ。…少しでも考えておいて欲しい。僕には染谷くんが必要なんだ。」
瞳を細めそう囁く彼にゆうりは困惑した。五番隊自体が嫌だとかそんな事は無い。ただ藍染は少し苦手だ。この優しい仮面の下にどんな顔を隠しているのかが全く読めない。それに、自分には副隊長が務まるとは到底思えないのだ。
「…藍染隊長はどうしてそこまでして私を評価して下さっているのですか?」
「君はそもそも霊圧が高い。それに鬼道の扱いも並大抵の死神では無いだろう。白打は苦手の様だが…勤務態度や勤勉さも良い。またと無い優秀な死神だよ。」