第5章 死神編【中編】
「…私は先に帰宅する。後の事は任せた。」
「…うん、お疲れ様。」
最近、白哉が早帰りする事が増えた。勿論自分の職務は全てこなしてはいる。理由を聞いた所どうも彼の奥さんの体調が極めて悪く、少しでも傍にいる為に帰宅を急いでいるらしい。
あの白哉が貴族では無く流魂街の女性を嫁にとったのだ。会ってみたい気持ちはあったが中々機会に恵まれないまま、体調の悪い今も勿論逢いに行く事は許されずゆうりは足早に隊首室を出て行く彼を心配そうに見送った。
「良くなると良いんだけど…。」
そもそも魂魄である私達も風邪を引いたり難病を抱えたりする事があるなんて不思議な話だ。もう死んでいるというのにまるで生きているよう。
彼が去ってから時間は刻刻と流れ、書類のチェックを終えたゆうりも大きく伸びをしてから1度茶を入れ休憩を挟む。もう辺りは暗くなっており完全に夜になってしまった。それでも白哉の負担を多少なりとも減らせるようにと己の時間を削り書類の整理から彼の仕事の範疇にまで手を付け進める。小さな欠伸1つ零し、新たな報告書をパラパラと捲っている時突然執務室の扉がノックされる。
「はぁい、どうぞー。」
「失礼するよ…おや、染谷くん1人かい?」
現れたのは藍染だった。彼は部屋の扉を開くなり姿が無い白哉の存在に辺りを見渡す。ゆうりは予想外の訪問者ではあったが特に気にせず、報告書を捲る手を止め頭を下げる。
「あ、お疲れ様です藍染隊長。朽木隊長でしたら本日は既に帰られました。」
「そうか…君は残業か?他の隊士も居ないようだが。」
「そうですね。皆時間になったのでそれぞれ休んでいると思います。私はちょっとでも仕事を進めておこうと思って。朽木隊長に用事ですか?」
「あぁ。残念ながら会えずに終わってしまったが…折角だ。少し話でもしないかい?」
「…えぇ、是非。今お茶用意しますね。」
「すまないね、ありがとう。」
和やかな笑顔を浮かべ部屋に入って来た藍染にゆうりも同じような笑顔を向けて席を立った。
新しいお茶と茶菓子を用意して戻り彼の前へそれを置き反対側のソファへ腰掛ける。藍染は湯呑みを手に取り1口啜った。
「四番隊から六番隊へ移動をしたんだね。どうだい?治癒専門から随分職務内容も変わっただろう。」