第5章 死神編【中編】
海燕と別れたゆうりはそのままの足で霊圧を閉じ、森へと赴いた。相変わらず静かで涼しい。知り合ったばかりの彼の霊圧を感じたのだが辺りには居ない。となると…以前と同じように木の上だろうな。ゆうりはひょいっと木に登った。
「あ、見っけ。」
「うおっ…!?」
一切気配を隠し突然現れたゆうりに日番谷は身体こそ跳ねるものの前回のように落ちることは無い。悪びれた様子も無くゆうりは彼の隣へ座った。
「…死神ってのは随分暇な仕事なんだな。」
「そうだねぇ、虚の出現が無ければ比較的暇だよ。その代わり任務に着いてる時は命掛かってるからね。久しぶり、冬獅郎。」
皮肉を言ったつもりだがどうやら彼女には通じないらしい。笑顔を崩さないゆうりに彼は諦め溜息を零す。
「アンタ、何処の隊なんだ?」
「六番隊だよ、第四席。冬獅郎は友達出来た?」
「…まぁ、一応。」
「へぇ、どんな子なの?」
「良い奴だよ。最初は君が天才少年か、なんて絡んで来たからなんだコイツって思ったけどな。」
「やっぱり冬獅郎って天才なんだ。霊圧のコントロールは上手だし、多分賢い子なんだろうなとは思ってたんだけど。特進?」
「あぁ。」
「そっか、じゃあこれから現世に魂葬の実習をしに行ったりするんだね…。」
ゆうりは少しばかり目を伏せた。二度とあんな事件は起きないで欲しい…。まだ入学したばかりのこの子達に怖い思いをさせたくない、そう願う。
「なんだよ、魂葬って難しいもんじゃないだろ。」
「そうだよ。魂葬自体は全然難しくない…けど、現世に行くって事は少なからず多少の危険は伴うの。油断せずに頑張ってね。」
「…何かあったのか?」
「私達の代が引率した時ヒュージホロウに襲われたの。奇跡的に死者は居なかったけど、1年生達に怖い思いさせちゃったから。」
「防壁が張られるんじゃ無かったのか?」
「張られたよ、それでも突破されちゃったんだよ…あれから強化されたとは聞いたけど。それより冬獅郎!」
「な、なんだよ…。」
声を荒らげたゆうりに日番谷は大きな瞳を丸めて体を揺らす。彼女は少し怒った様子で口を尖らせた。その表情を見せる理由が分からず彼は困惑する。
「私、君に1回も名前呼ばれて無いんだけど?」
「は…?」