第2章 過去編
「えっ、死ぬんですか?もう死んでるのに?」
「現世での死はいわゆる肉体という器子が死んだだけ…魂は生きてるんだよ。今ゆうりちゃんがボクらの目の前に居るようにね。」
「魂が朽ちる事こそ本物の死や。魂魄が死ぬと身体は霊子に変わる。空気中をただ漂う事になって、二度とゆうりとして意識を持つことは出来ん。」
茶化すような言葉の紡ぎ方でも表情でも無く真剣な眼差しの矢胴丸に冗談でないことが伺え、ゾクリと背筋が震える。既に一度死んだ身では有るが次の死は本物の死…。話す事も出来ないただの物質に変わってしまう。正直、想像するだけでも怖いと思った。
「…死神になるって、大変なんですね。」
「そうだね〜。でも悪い事ばかりじゃないよ?可愛い女の子も多いしね。」
「それはアンタのメリットであってゆうりには関係無いやろオッサン。」
「手厳しいなぁ。」
じろりと睨む矢胴丸に京楽は悪びれなく笑う。ゆうりは手に持っていた本をぎゅっと胸に抱いた。
「京楽さん、リサさん、死神について教えてくれてありがとうございました!少しだけ皆さんのことを知れて嬉しかったです。」
「もう戻るん?もうちょいゆっくりして行きや!」
「そうだよ、どうせ今は暇だしね〜。」
「いえ、私もっともっと知らなければならない事、考えたい事が沢山有るので1度戻ります。」
「残念だな…次はお茶菓子用意しておくからまたおいで。」
「ふふ、ありがとうございます京楽さん。リサさん、今度ゆっくり一緒に読書しましょう。それではお邪魔しました!」
立ち上がった彼女は2人に頭を下げてその場を後にした。流魂街で過ごすか、死神として命を懸けて何かを護り続けるか。どちらを取るかはまだ決めることは出来ない。
けれど、決断する時は必ず来る。その日に備えゆうりは前を向く。死んだ時のこと…過去は振り返らないし必要も無い。ただ今後決して後悔の残る選択をしないように、それだけを心に誓った。
*