第5章 死神編【中編】
驚愕する海燕とは対照的にスプーンを咥えキョトンと目を丸めたゆうりは眉を下げて笑った。
照れたり顔を赤らめる事すら無くあっけからんと答える彼女に海燕が今度は目を丸めた後座り直す。
「んだよ、びっくりしたじゃねーか。そもそも何で薬指に付けてんだ。」
「阿近に2つ目の制御装置頼んだらこうなったんです。」
「…そういえばネックレスもまだついてるよな…お前、霊力高まってる事あんまり周りにバレないようにしとけよ。」
「どうして?」
「死神の強さは霊力に比例する。ゆうりはそれが高すぎんだよ。誰か副隊長、隊長格が欠けたら今度はお前やる羽目になるぞ。」
「私そんな器じゃありませんよ。人に指示したりするのは苦手だし、むしろ可能ならできる限り任務は1人で行きたいんです。」
「何で?」
「多人数で行って皆守り切れる自信は有りませんし、目の前で失うのが怖いから。学生だった頃友達が虚に殺されそうになった時私の心臓が止まるかと思ったんです。あんな思い、できる限りしたく有りません。」
やや俯き気味に語る彼女の話を聞くと海燕は頬杖を着いた状態でじとりとした眼差しをゆうりへ向けた。何処か不機嫌というか、怒っているようにも見える表情にゆうりは食べる動きを止める。
「あのなぁ…学生時代と今を重ねるなよ。今俺たちは学生じゃねェ、死神だ。虚との戦闘実戦が全く無い時とは違う。虚を退治する事を生業に生活してんだ。それなりの覚悟と、責任をもって任務についてる。気持ちはお前と一緒だ。もっと周りを信じてやれ。四席なんだろ。」
彼の言葉にゆうりは驚き口をぽかんと開ける。確かに、過去の一件以来自分で全てなんとかしないと、と思う意識が無意識に高まっていた。けれどその気持ち自体が不信感の現れにもなっていた事に気付いてはいなかった。
「…確かに、そうですね。そんな事思った事も有りませんでした。海燕さんが部下から信頼されてるのがよく分かった気がします。」
一方的な信頼では、信頼関係自体は成り立たない。言われてみればその通りだ。ゆうりは改めて彼を尊敬した。
言葉を否定せず素直に受け入れる彼女に海燕も歯を見せて笑い直ぐに真剣な表情を見せる。