第5章 死神編【中編】
「はぁー、苦労してたんだなお前。」
「真央霊術院で年相応の友達が出来て皆と過ごす内に変わったんですかね?それに、ここの皆さんは優しいから。甘えるのは苦手だったけど…今は沢山の人に甘えっぱなしかもしれません。」
「…大事な所であんまり頼って来なさそうな気もすっけど。」
「私から見た海燕さんもそんな印象ですよ?」
「バーカ、俺は頼りっぱなしだよ。信頼してる部下や上司に恵まれてるからな。」
「うちの隊長も優しいし信頼出来ます!」
「その言葉本人に聞かせてやれよ、喜ぶと思うぜ。」
そんな他愛ない話をしている内に目的の甘味処へと到着する。テーブルを挟んで椅子が2つある席へ通されると、彼はわらび餅、ゆうりはあんみつを注文した。
みずみずしいフルーツとカラフルな求肥、艶々な餡子の乗ったそれが運ばれて来るとゆうりは目を輝かせる。
「わぁ…いただきます…!」
「ここの甘味処好きで結構来るんだよ。」
ゆうりは添えられていた黒蜜をたっぷりと掛けてからスプーンで餡子と蜜柑を掬って口に運ぶ。程よい甘さと蜜柑の酸味が口いっぱいに広がり彼女は頬に手を宛て感嘆の声を上げた。海燕もきな粉の掛かったわらび餅へ黒蜜を垂らしパクリと口へ運ぶ。
「美味しい!」
「ははっ、幸せそうな顔だなー。」
「海燕さんも1口どうぞ。」
「俺は…」
よく来るから、味も知ってんだけど…。
言葉が喉まで出かかった所でにこにこと笑いながら餡子と求肥をスプーンに取り差し出して来るゆうりに、1度黙ってから大人しく口を開き食い付いた。
「どうですか?」
「うめぇ。知ってたけど。」
「…あっ、そっか来たことあるんですもんね!美味しかったのでつい…。」
「お前のそういう所に男共は引っ掛かるんだろうなァ…。」
彼女に聞えない程の小声で呟き頭を掻くと不意に餡蜜の入った椀を支える手に目がいく。細い指をキラリと彩る綺麗な指輪。海燕は机に手を着いて立ち上がる。
「なんだそれ!?恋人でもできたのか!?」
「これ…?霊圧制御装置ですよ。ほとぼり冷めるまで仕方ないかと思ってたんですけどこう毎回聞かれるとちょっとめんどくさいですね…。」