第5章 死神編【中編】
「お待たせしました、海燕さん!」
「おう、仕事は大丈夫なのか?」
「必要な所までは終わらせたので大丈夫です。海燕さんは?」
「とっくに終わらせてお前待ちだよ。」
「流石副隊長!」
「…あぁ、そういや女扱いして欲しいんだったっけ?じゃあ、ほら。」
ここは十三番隊の隊舎前。午前中の仕事を済ませたゆうりは海燕と以前約束した甘味処に行くため休憩時間を合わせ待ち合わせをしていた。
海燕は1度2人でした会話を思い出すとゆうりへ向けそっと手を出す。彼女はその意図を組むと己の手を重ね繋いだ。
「海燕さんって結構女慣れしていますよね。」
「そりゃお前、目を離すと偶にどっか居なくなるって檜佐木から聞いたから繋いだだけだぜ?女慣れは…どうだろうなァ。」
「あ、あれはちょっとお祭りではしゃいじゃっただけで普段はそんな事ないですよ…。ていうか、これ結局子供扱いされているという事じゃ…。」
「おっ、察しが良いな。」
「…もう、本当意地悪!」
頬を膨らましムキになったゆうりは繋いだ手を解きそのまま指を絡め繋ぎ直した。彼女はどうだとばかりにんまりと口角を吊り上げ海燕を見詰める。からかった当の本人は顔を背け肩を震わせ笑っていた。
ちょっと挑発をしただけで意地になりわざわざ手を繋ぎ直してくる姿が単純で愛らしい。
「子供と恋人繋ぎはしないですよね!」
「あぁ、まぁ…そうだな。」
恋人繋ぎ、ってんだから恋人以外とこうやって繋がないとは思うけど。
内心そう思いもしたが折角繋いだ手を解くのもしのびなく、寧ろ手に緩く力を込め直す。
「お前、初めて来た時より感情豊かになったというか…年相応になったんじゃねぇ?」
「そう見えますか?」
「もっと小せぇ頃はやたら達観してるっつーか…どっか遠慮してたけど今はそれが無くなっただろ。」
「…言われてみればそうかも。浦原さんに拾ってもらったばっかりの頃は嫌われるのが怖い思いが強かったから。」
「あんま嫌われるような性格には見えねェけど…あー…でも同性から嫉妬はされそうだな。」
「そんな所ですね…母にも同性の女として見られてたんですよ?意味わかんないですよね、自分の子供なのに。それでも母だから嫌われるのがいやで…自己主張のあまり出来ない控えめな性格だったんだと思います。」