第5章 死神編【中編】
「何で笑ってるの?」
「いや、余り昔と変わらぬ様子にただ愉快だと思っただけだ。」
「…強くなったと思うんだけどな。」
「そうでは無い。中身の話だ。」
そう言って白哉はゆうりの頭を撫でた。納得がいかず不満げな姿を見せたが、普段よりも何処か楽しそうな様子の彼にそれ以上何かを言うことも無くゆうりは白哉と2人で隊首室を後にした。
帰宅途中、学生時代の話など他愛ない会話を交わしているとふと彼の視線が手元に落ちた。明らかに左手を凝視している。言わんといしていることを察したゆうりは苦笑しながら右手で指輪を撫でる。
「これね、阿近に制御装置を頼んだら作ってくれたの。これを見た男達がどんな反応するか教えろって。」
「なるほど、余程独占欲が強いと見れる。」
阿近の言葉をそのまま鵜呑みにして話すゆうりに白哉は溜息を吐いた。そもそもこの胸がザワつく感覚は一体なんなのだろうか。白哉はゆうりへチラリと視線を向ける。
「ただの悪戯だよ。」
「…本当にただの悪戯か今一度考えるのだな。」
「……うん。」
彼の鋭い一言に双眼を見開くと、静かに目を伏せた。
本当は分かってるよ。だって阿近の目、本気だったもの。けれど彼自身がそれを誤魔化すのなら私も目を逸らすしかないじゃない。
ゆうりは間を開けて白哉の言葉に頷く。そしてそのまま彼は屋敷へ、ゆうりは寮へそれぞれの家へと足を進めるのだった。
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