第5章 死神編【中編】
「はいはい、畏まりました。贈り物ですかね?」
「はい。」
店主と思われる老人は羽織を丁寧に畳直し慣れた手つきで綺麗な包装紙で包んでいく。手を動かしながらも店主はゆうりへ顔を向け気さくに声を掛けた。
「旦那様への贈り物ですか?」
「え?…あ、いえ。お世話になってる上官へのお礼なんです。」
「左様でしたか、それは失礼しました。」
ゆうりは己の左手を見た。なるほど、これのせいか…。
今後もあらぬ誤解を招き続けそうだと頭を抱えるのだった。
店を出た彼女は上機嫌で六番隊隊舎へと向かう。
隊首室へ入ると彼は既に業務を終えたようで筆を置き帰り支度をしていた。
「ゆうりか。どうした?」
「えーっとね……いざ渡すとなるとちょっと恥ずかしいな。」
彼女は照れ臭そうに頬を掻いた後手に持っていた包を差し出した。白哉は一瞬躊躇った後それを受け取る。触っただけでは中身は分からなかったが…どうやら布の何かのようだ。
「これは…?」
「昨日と、昔霊圧コントロールを教えてくれたお礼。プレゼントなんてした事ないから何にするか迷ったんだけど…白哉に似合うかなって思って選んだの。」
白哉は包みの青いリボンを摘み引っ張った。解けたソレを机に置き中に入っていた羽織を取り出す。手触りは申し分無い。鮮やかな薄いピンクと白の桜が刺繍された上等な羽織だ。
「少し女性物感あるかなって思ったんだけど、白哉は顔綺麗だしきっと素敵に着こなすだろうなと思って。斬魄刀、桜なんだよね?」
「……あぁ。」
まるで自分の事のように爛々とした瞳で語る彼女に白哉は普段緩む事のほとんど無い表情が思わず崩れそうになり掌で口元を隠した。初めて贈り物を送る相手が己であった事は勿論だが、自分の事を考え選んでいる事がじわりと多幸感をもたらせた。
その顔を見せまいとする彼にゆうりは追い打ちを掛けるように目の前にスっと何かを差し出す。
「これもあげる!白哉、鯉飼ってるんでしょ?魚好きなのかと思って。お祭りのお土産。」
「……これは飴か?」
目の前に現れたのは透明度の高く綺麗な金魚の形をした飴だった。まさか、鯉を飼っているからといってこんな物を買ってくるとは思わなかった。己の想像を超える行動と発想に僅かに目元が和らぐ。