第5章 死神編【中編】
1日の仕事を終えたゆうりは今、十二番隊の隊舎へと来ていた。目的は以前阿近に頼んでいた2つ目の制御装置を受け取る為だ。
「こんにちは、阿近居ますか?」
「あっ、ハイ!奥に居らっしゃいます!呼んできますか?」
「大丈夫、自分で行くわ。ありがとう。」
前髪を頭の上で留めた少年に連れられて隊首室まで進むとそこには涅と阿近が話していた。少年は特に気にせず片手をグッと上げ阿近へと声を掛ける。
「阿近さん!ゆうりさんが来ましたよ!」
「あれ、私の事知ってたんですか?」
「ハイ!有名ですから。」
「リンお前な…局長と話してる間は通すなつったろ。」
「はっ……す、すみません。」
すぐ様しゅんと落ち込んだ壺府にゆうりが慌てて彼の前に立ち両手を振った。涅はゆうりを見ると暫し黙ったが彼女の存在を思い出すなり顎に手を宛て歩み寄った。
「この子は悪くないよ、私が通して欲しいってお願いしちゃったから。」
「ほう、懐かしい顔だネ…。本当に生きてるとは驚いたヨ。で、私が作った腕輪はどうかネ?」
「あっ、はい、お久しぶりです涅隊長。涅隊長が作って下さった腕輪のお陰で消滅せずに済みました。その節は本当にありがとうございます。」
「浦原の報告通り身体的な影響もなさそうだネ…他の機会にも使えそうだ。もう用はないヨ、行きたまえ。」
「相変わらずサッパリしてるなぁ…。阿近、制御装置取りに来たんだけど出来てる?」
「あぁ、着いて来い。局長、すみません。一旦席外します。」
「失礼します。」
涅に頭を下げ阿近に連れられた先は彼の部屋だった。執務用の机から取り出された小さなケースから輪状のアクセサリーを摘むと、阿近は隻手でゆうりの左手を取り甲を上に向ける。
「何…えっ、指輪?」
「おう。この木賊色のパーツが過剰に出る霊力を吸収して抑える役割をしてる。」
「それは良いんだけど…何故薬指…?」
「そのままの意味だけど。」
スっと薬指へ通されたリングは全体的に綺麗な金色をしており小さな木賊色をした宝石のような石が埋められていた。まるで婚約指輪のような見た目に困惑すると彼はあっけからんと言い放ち、彼女の腰へ腕を回し引き寄せる。