第5章 死神編【中編】
「久しぶりっスねぇ!平子サン。」
「オレはお前に会いに来たんちゃうぞ喜助ェ…。」
「知ってますよん、ボクだってアナタじゃなくてゆうりサンを探してここに来たんスから。帰っちゃったみたいですけど。」
「ほんま最悪や…折角飛んで来たんに。間に合わへんとか…。それより喜助、気付いたか?」
平子は両手を膝について口から深々と息を吐き出した。吐き切った所で弛緩に顔を上げる。その表情は普段のチャラけた様子は無く真剣そのもので、浦原も釣られて真顔に戻った。
「…何がです?」
「ゆうりと居ったのは市丸ギンや。もし、向こうで仲良うやっとったら相当面倒な事んなるで。」
「……そうっスね。でもアタシは追放されちゃいましたし、手出し出来ないんですよ。」
「何ヘラヘラわろてんねん。次こっちにゆうりが来たらオレが無理にでも攫うからな。ただでさえ霊圧のバカ高いゆうりがあっち側に取られたなんて事になれば藍染が止まらん。邪魔せんといてや。」
「それは聞き捨てなりませんねぇ。申し訳無いですけど、今度こそボクがゆうりサンを守ります。譲りません。」
「上等や、やってみ。」
無言の睨み合いが続いた。けれど浦原はその沈黙を破るようにパッと笑い背を向ける。
「とりあえずゆうりサンが無事で良かったって事で今回はお互い帰りましょ!」
「…せやな。」
浦原は帽子の唾を引っ張り顔を隠し浦原商店へと踵を返した。多分、藍染は霊力の異常に高いゆうりサンに目を付けているだろう。1番最悪なのが平子サン達の時のように実験台にされてしまった時、ボクは直ぐに駆け付けることが出来ない。虚化なんてされてしまったら…考えるだけで嫌になる。
どうかこれからも無事でいて欲しい。可能ならば直ぐにでも彼女を連れ出して藍染の元から無理にでも離しておきたい。今は出来ずとも、次現世に来た時は迷わず彼女に会いに行こう。例え残して来てしまったことを非難されたとしても、嫌われていたとしても、ゆうりサンが大切で、守りたい気持ちに変わりはない。
「またここで会いましょう、ゆうりサン。」
彼の小さな呟きは祭りの喧騒に溶け、誰に聞かれる訳でもなくて消えていった。
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