第5章 死神編【中編】
CLOSEの看板を立てた浦原と四楓院は商店の中へ戻る。普段使っているちゃぶ台を挟み浦原は自身に茶を、猫の姿のままな四楓院にミルクを用意した。
「ゆうりサン、死神になったんですね。」
「そのようじゃな。1人で複数の虚退治に来ていた所を見る限り、腕は立つと見て良いじゃろう。…何故会いに行かなかった?」
「はは…行けるわけ無いじゃないスか。ボクはゆうりサンを裏切ったんです。合わせる顔がない…。」
捨てる事はしないって、約束をしていたのに。アタシは彼女を置いて何も言わず現世に逃げてしまった。捨てるつもりなんて勿論無かった。しかしゆうりサンからすれば、何も言わず戻らないという事は捨てられたのではと感じてもおかしくない。例え尸魂界を去らねばならない理由があったとしても。そんな人間が彼女に会う資格なんて無いじゃないですか…。
「随分大きくなっとったぞ、色んな意味で。」
「ちょっと、真剣に悩んでる時にそういう事言うの辞めてもらっていいスか?」
「何を言う、お主の辛気臭い顔を見せられているワシの方が余程迷惑しとる。」
「痛ぁっ!!」
四楓院の鋭い爪が容赦無く浦原の顔を引っ掻いた。彼は堪らず顔を抑え俯く。
「顔を合わせる事が出来る状況下で会わん、という事は逃げ続ける事と同義じゃろうて。」
「分かってますよ…。」
1日だって彼女を忘れた事は無い。罪悪感は今も残っている。けれど顔を合わせた所で、置いてきてしまった事で嫌われてしまっていたら。直接嫌いと言われてしまったら。とてもじゃないが立ち直れない。我ながら女々しい事を考えているとは思うが、踏み出すことが出来ない。
「…ピアスは付いておったぞ。お主が作った制御装置も持っておった。」
「!!本当、っスか?」
「ワシが下らぬ嘘をつくと思うか?」
制御装置は兎も角、ボクかただのエゴで付けたピアスを?彼女はまだ付けていてくれている…?
その言葉に心臓がどくりと脈打った。一気に不安よりも会いたいという素直な気持ちが高まる。その時だった。
ズン、と重くなるような強い霊圧を感じる。それは四楓院も同じだったらしく、目を丸めた。
「これは…。」
「ゆうりサンの霊圧だ…!」