第5章 死神編【中編】
「すみません、この金魚と兎下さい!」
「毎度あり、持って帰るかい?」
「はい!」
透明な袋で飴部分を包み綺麗なリボンで封をされたそれを更に手提げ袋に入れてもらったゆうりは受け取った後振り返る。…が、3人共姿が見えない。
「…あれ、はぐれちゃった。」
直ぐに霊圧を探ってみると感じるものの人の多さから正確に位置までは掴めなかった。とりあえず別れてしまった場所まで戻ってみるも3人は居ない。
「困ったな……はぐれた時の待ち合わせ場所決めておけば良かった。」
とりあえず霊圧を感じる方へ向かって歩いてみる。ついでに近くの屋台でベビーカステラを買って食べながらキョロキョロとしていると不意に2人の男が道を塞いだ。どちらも明るい髪色をしておりニヤニヤと口元を緩めた高校生程の男に見える。ゆうりは足を止め訝しげに彼らを見た。
「…あの、道あけて貰えませんか?」
「君今1人?俺らと来ねえ?」
「こんな所1人で回ってても退屈だろ?」
「いえ、はぐれてしまっただけなので大丈夫です。失礼します。」
「ちょっ、いいじゃん少しくらい!」
「……しつこいな。」
無理矢理掻き分けて去ろうとした所、がしりと腕を捕まれたゆうりは小さく呟き男達を睨む。意図せずブワッ、と霊圧が溢れ出た。霊圧を感知出来ずとも殺気にも似た感覚に目の前の男達は酷く鳥肌が立ち怯む。顔を青ざめた彼らにゆうりはハッとすると直ぐに高まった霊圧を抑え曖昧に笑う。
「…すみません、失礼します。」
呆気に取られる男達を残しゆうりはそそくさとその場を足早に去った。別に、霊圧で脅すつもりは無かったのについ出てしまった。早く阿近から制御装置を貰わないと…。
焦る気持ちで歩いていると今度は後ろから手を掴まれた。先程の男達かと思いゆうりは不機嫌そうに振り返る。
「もう、いい加減に……っあ。」
「お前な…こんな所であんな霊圧垂れ流すなって。」
手を掴んでいたのはゆうりの良く知る男…檜佐木だった。思わぬ相手に彼女は1度惚けた顔をしたが、安心した様子で笑う。
「ごめん…ちょっと変な人に絡まれてつい。探してくれてありがとう。」
「ったく…そろそろ帰るぞ。明日も仕事が有るんだからな。」
「えー…。」
「えー、じゃねぇ。乱菊さん達も待ってる。」