第5章 死神編【中編】
「すみません、チョコバナナ下さい!!」
「はいよ!」
「早いな。」
3人が追い付く前に早速とばかりにカラフルなチョコスプレーの付いたチョコバナナを購入したゆうりは幸せそうにそれを頬張る。市丸はひっそりと口角を吊り上げるとチラリと檜佐木に一瞥くれた後にゆうりの後ろから顔を覗かせた。
「な、ボクにも1口頂戴。」
「いいよ。」
「ほな遠慮なく。」
「あ゛っ……!」
市丸はチョコバナナの刺さった割り箸を持つゆうりの手を包むように握るとそのまま己の口元へ運びパクリと控え目に齧った。1度視線を投げられた事から態とと取れる行為に檜佐木は強く奥歯を噛み締める。ゆうりは全く気にしない様子でチョコバナナを食べ続けるが市丸は明らかに挑発するように笑う。松本は近くの店でビールを買ってきたようで、相変わらず豪快にぐびぐびと飲みながらゆうりへと問い掛ける。
「ねぇ、ずっと思ってたんだけどあんた達結局付き合ってんの?」
「私とギン?付き合ってないですよ。」
「結構噂になってるわよ〜、傍から見てると確かにそう見える時あるもの。」
「ボクは別に噂になってもええよ。」
「噂になっても事実では無いし、困る事も無いからどうでもいいかなぁ。」
「ゆうりって結構さっぱりしてる所有るよな…。」
「あたしはそういう所好きよ。」
4人は人が入り乱れる屋台の列の奥へと更に進む。容姿のいい彼らはすれ違う人々の目を随分引いたが当の本人達は気に留める事は無い。檜佐木はイカ焼きを買い、市丸は松本に無理矢理買わされた狐の面を頭に着け、ゆうりと松本は2人でたこ焼きを頬張り歩く。
「虚さえ居なければこんなに平和なんだね、現世も。」
「今度は一緒に買い物に来ましょうよ。ゆうり、あんた着物ばっかりで現世の服全然持ってないでしょう?」
「確かに…お金ってみんなどうしてるんですか?」
「十二番隊が環から現世の金に換金してくれんだよ。それも知らなかったのか?」
「うん、現世に行く機会って殆ど無かったから…あっ、あれなんだろ!」
「あっ、こらまた…!」
ゆうりは目に止まった屋台へ駆け寄った。細い串に刺さった飴細工だ。屋台の光を浴びて透明な飴がキラキラ輝いて見える。兎の形や鳥、金魚、バラの形等色んなものがあった。