第5章 死神編【中編】
「本日より六番隊第四席に拝命された染谷ゆうりです、よろしくお願いします!」
「あぁ、働きの程は卯ノ花隊長より聞いている。よろしく頼む。」
そんな会話をしたのはつい先日の事だ。ゆうりは四番隊を外れ遂に他の隊へ移籍を果たした。霊術院時代から優秀だという噂の耐えなかった彼女を欲しがる隊長は多かったが、彼女は悩んだ末殉職してしまった六番隊の穴を埋めるべくこの隊を選んだのだ。隊舎内での任命式を終えたゆうりは早速隊長である白哉の命で1人現世へと赴いていた。
「ふぅ…やっぱり四番隊とは根本的にやる事が違うわね。それに、限定霊印まで打たれるなんて…。」
虚が悲鳴を上げてゆうりの背後で消え行く中、彼女はため息を吐きながら胸元を捲り椿の花を見下ろす。普段であれば隊長、副隊長クラスの死神にしか打たれないものだが霊圧の極端に高いゆうりも限定霊印を押す事を命じられたのだ。これがまた、手加減の具合が分からずコントロールしにくい。
「退治も終わったしそろそろ帰ろう……ん?」
斬魄刀を一振してから鞘に戻し地獄蝶で戻ろうとしたその時強い視線を感じた。キョロキョロと辺りを見渡すとそこには毛艶のいい黒猫がジッとゆうりを凝視している。彼女は身を屈めその黒猫を見詰め返した。
「綺麗な猫ね。飼い猫かな?」
猫は鳴かずにただゆうりを見詰め続ける。そこでようやく違和感に気付いた。この猫、死神の私が見えるの?
程なくして猫は足音も立てずそのまま背中を見せしなやかな尻尾を揺らして行ってしまった。
「……気の所為だったかな。」
猫って割と霊感強いとも聞くしな。強引に自分を納得させたゆうりは今度こそ現世を去ろうと地獄蝶を出したが、ピタリと固まる。
なにやら浴衣姿の女性がやたらと多い。行き交う子供達は笑顔で金魚の入った袋を持っていたり、ヨーヨーをついている。どんな催しが行われているのかは直ぐに想像が出来た。ゆうりは目をキラキラと輝かせ、足早に尸魂界へと戻る。
瀞霊廷に戻るとこちらも日が落ちておりすっかり夜になっていた。任務完了の報告の為そのままの足で隊首室へ向かう。
「ただいま、虚退治終わったよ。」
「あぁ、御苦労だった。怪我は?」
「ふふっ、無いよ。それより報告書明日で良い?現世のお祭り行ってくる!」