第4章 死神編【前編】
「耳弱いん?かわえぇなぁ。」
「待って、な…何する気なの…?」
「分からんほど、もう子供やないやろ。」
「っ……でも…。」
「えぇから流されてや。二度とボクの名前呼び間違えたりせんように、目ぇ逸らさんといて。」
少しだけ持ち上げられた瞼から覗く空色の瞳に思わず見とれた。その色がとても綺麗で澄んでいるように見えたのに何故彼は常にそれを隠して仕舞うのだろう。
ゆうりはきゅっと唇を噤み、隻手で彼の後頭部を撫でた。自分と同じ色をした柔らかい髪が指の間をすり抜ける。羞恥心は勿論有るし、初めての行為に緊張もあった。けれど、目の前の男を嫌いになれなくて突っぱねる事が出来ない。
「…痛いのは嫌よ。」
「痛い事なんてせえへんよ、たっぷり甘やかしたる。」
市丸は再び短い口付けを交わすと湿った唇を顎先から首筋へ下ろしていく。薄い皮膚に掛かる吐息と頬を掠る彼の髪の毛がこそばゆく小さく身をよじった。
「ふふっ…擽ったい。」
「擽ったいのが、気持ちよく感じるまでいじめ倒したろか?」
「それは嫌…っ、ん。」
彼の唇が鎖骨より更に下へと向かう。最中、強く肌を吸い上げられ花弁のような赤い痕がくっきりと残る。散らすように喉元から鎖骨上、肩口にまで所有印を刻みながら死覇装の腰紐を解きはだけさせる。
「……キスマーク、付けすぎだよ…。」
「ゆうりの肌、真っ白やからなぁ。よう映えるで。」
市丸は身を屈め背中へ片腕を回すと器用に下着のホックを外した。顕になる雪のような肌を掌で腹からゆっくりと撫で上げていく。酒気を帯びているせいか、羞恥心のせいかとても熱く感じた。ゆうりは初めて他人に見られる肢体にドキドキと心臓が高鳴るのを自覚する。
「は、恥ずかしい…!」
「今更照れるん?大丈夫やて、ボクしか見とらん。綺麗や。」
そろりと片手が胸へと添えられる。数年でしっかり発達した胸を優しい手つきで揉みしだき、もう片側に市丸の頭が寄せられた。掛かる熱を帯びた吐息に身体がふるりと震えると、薄い唇が中心を包み強く吸い上げられる。
「あっ、待……ギン…!」
「柔いなぁ。初めて会うた時より随分大きくなったやん。」
「んっ、ぅ……。」
「声抑えんと聞かせてや。」