第4章 死神編【前編】
「ゆうり。」
布団の上で眠る彼女の体へ跨り両手を床へ着ける。死覇装から覗く白い肌はアルコールのせいかうっすら赤く染まっていた。市丸は未だ寝息を立てるゆうりの頬をそっと撫で耳元に唇を寄せる。
「ゆうり、起きてや。」
「ん…んん……朝…?」
閉じていた瞼がピクリと揺れた。そのまま瞼を持ち上げると視界に映る市丸の顔にゆうりはパチパチと瞬きを繰り返した。状況が全く理解出来ない上に、まだ頭はぼんやりとしている。市丸は何食わぬ顔で頬に添えていた手を顎先へ滑らせ固定させた。
「…なぁ、ボクに触られるの嫌やない?」
「急にどうしたの?嫌なんて、そんな事思わないよ。」
「ほんなら、えぇな。」
「何が……っ、ん!」
薄く熱い唇が重なった。啄むように角度を変えて何度も口付けられる。小さく短いリップ音が静かな部屋に幾度と響く。顎を持っていた掌は再び頬を通り耳の下をするりと撫で髪に指を絡めて撫でた。
「…舌ァ出してや。」
「……こ、う…?」
「いい子や。」
鼻先が触れる程の距離で囁かれた言葉にゆうりは小さく唇を開き赤い舌をちろりと晒す。市丸は己の舌を見せるとそのまま彼女の舌腹同士を擦り合わせ絡め取って咥内へ潜り込ませる。床へ着いていた手を彷徨わせ、彼女の手を見付けると指を絡めて握りそのまま床に縫いつけた。
「んっ、んぅ……ぁ…。」
「っは……。」
ゆうりのくぐもった声と、市丸の熱い吐息が溶け合う。唾液の混ざる水音を立てて彼の舌が歯列をなぞり舌裏を擽る。深く甘い口付けに没頭していると次第に呼吸が苦しくなり、ゆうりは彼の胸板を軽く叩いた。
唇が離れるとゆうりは深く呼吸を繰り返し、ぼんやりとした瞳で市丸を見上げる。市丸は余裕を帯びた表情で彼女を見詰めた。
「……抵抗せんの?」
「…まだ酔ってるのかも。頭クラクラする。」
「なら最後まで酒のせいって事にしてや。」
「え……あっ、ちょっと…ギン…!」
耳元で囁かれる言葉の意味を瞬時に汲み取れず惚けるとそのままぬるりと舌が耳を舐めた。耳介をなぞり耳朶を甘く齧られゾクゾクと背筋が甘く震える。感じたことの無い感覚に戸惑い繋いだ手に無意識に力が篭れば骨張った指の腹が軽く手の甲を撫ぜた。