第2章 過去編
ゆうりは今日、瀞霊廷内にある書庫へとやって来ていた。そこには漫画から雑誌、文学本や過去の事件の資料等多岐に渡って揃えられていた。特に興味を持ったのは鬼道について書かれた教本だ。書庫に備えられた椅子に座り、数冊の本を机へ置く。
「鬼道には破道、縛道、回道があり、それぞれ90番台まである…数値が高い程難しいのね。」
私はどうやら鬼道を扱う上で必要な霊圧が充分にあるらしい。それならばこの鬼道で活かす事が出来るのではないか。
そう考えたのがきっかけであった。だがそれはあくまできっかけに過ぎず、単に生きていた頃に見たことの無い魔法のような力に自然と心が沸き立ったのだ。
「自分の霊力をコントロールして、技同士を組み合わせたり新しい鬼道を創り出すことも可能、なのかな…。」
「その通りだよ。」
ただの独り言のつもりだったが思わぬ返事が返って来る。ゆうりが顔を上げると目の前に立って居たのは藍染だった。ゆうりは眉を寄せるが彼は意に介さず目の前の椅子へと腰掛け頬杖を付いた。
「鬼道に興味があるのかい?」
「……はい。生きてる頃、こんな事出来ないし、魔法みたいだなって思ってました。」
「…まるで生きていた頃の記憶が有るかの様な言い方だね。」
「有りますよ?」
彼女は小首を傾げた。生前の記憶がある事が、当たり前だと思っていた為藍染の言葉が不思議でならない。
逆に、さも当然とばかりに答えるゆうりが藍染にとっては珍しく、些かの興味を引く。
「へぇ、何故死んだのかもハッキリ覚えているのかな?」
「そうですね…小さい子供が赤信号なのに道路飛び出しちゃった所を見たんです。ヤバいと思ったら身体が勝手に子供を追いかけてて、庇った結果死んじゃいました。」
「全く知らない子供を庇ったのか?随分優しい心を持っているね。普通出来ることではないよ。」
「あはは…どうなんですかね。勢いで飛び出しただけだし…死んでも別にいい、って気持ちがあったから。」
「…理由は聞かない方が良いかな?」
「別に大したことじゃないですよ。私母に嫌われてたんです。その日たまたま母と居たんですけど…最後に見たあの人どんな顔してたと思いますか?」
「どうだろうな…悲しそうな顔をしてくれた?」