第4章 死神編【前編】
頭の中がふわふわする。眠気も凄い。なんでこんな事になっているんだっけ…。ぼんやりとする意識の中でゆうりはそんな事を考えていた。
「あっ、もしもしギン〜?ちょっといつもの居酒屋まで来てよ。今女の子4人で呑んでたんだけどゆうりが酔っ払っちゃって、寝ちゃったのよねー。アンタ仲良いんでしょ?」
松本の声が意識の揺蕩うゆうりの耳に届く。彼女もだいぶ酔いが回っているように感じたが、どうやら今は電話中らしい。今日は以前松本とした約束を実行する為、仕事終わりに女子会が開かれていた。
メンバーは元々顔見知りの松本乱菊、伊勢七緒に加え十二番隊の涅ネムも来ていた。ネムが涅の娘だと聞いた時は大層驚いたが、クローンに近い存在と知り、涅の開発技術のレベルに些か引いたが彼ならばやりそうだとなんとなく納得する。
「ゆうりさん…お酒の瓶抱えたまま寝てますね…。」
「抱き枕か何かと勘違いしてるのかしら?」
初めのうちは松本と伊勢の隊長に関する常日頃の不満をゆうりとネムが聞いていたり、そこから何故か恋愛の話に飛んだりとだいぶ賑やかな時間だったのは覚えている。……が、元々酒豪の松本に合わせてハイペースに呑み続けた結果早々に酔いが回い潰れてしまったのだ。
「んー……喜助さん…。」
「喜助って誰?」
「元十二番隊の隊長ですね。一度マユリ様から伺った事が有ります。」
「あー、そういえば技術開発の創設者、浦原喜助って名前だったっけ?ゆうり、アンタ浦原喜助が好きなの?」
「これはただの寝言では…?」
松本は背もたれに身体を預け唸るゆうりの顔を覗き込み問い掛けるも返事は無かった。伊勢の言う通り寝言だったらしい。それから暫くして、1人の男が現れる。松本が先程電話を掛けた男だった。
「あら、遅いじゃないギン!」
「あのなぁ、ボク隊長やで。それなりに忙しいんよ。」
「仕事サボってるくせに何言ってんのよ、それよりゆうりが完全に寝ちゃったから寮まで連れてってくれない?」
「ゆうりの部屋知らへん。キミら知ってはるの?」
「私は知りません。」
「私も同じくです。」
「私も知らないわ。」
「せめて聞いてから呼んでや。」