第4章 死神編【前編】
「こちらも問題無く終わった所です。入隊した頃と比べると随分処置が早くなりましたね、ゆうり。」
「隊長のご指導のお陰ですよ。」
3人は総隊長に提出する報告書を製作する為に執務室に向かう。特に重傷者4名の個人情報や怪我の様子、経過や予測完治期間等書くことは多い。また同様の資料を彼らの所属する隊長に提出しなければならない。
「そういえば、彼らって何番隊の方達なんですか?」
「十三番隊です。浮竹隊長の部下ですね。」
「それは…さぞ心配されてるでしょうね…。」
「そうですね。早く部下達の無事を伝えて差し上げましょう。」
話に聞く限り、死者は居なかったらしい。訓練も兼ねてリーダー格1人と戦闘が苦手な隊士数名で虚退治を命じた所、予測されてた数より多くの虚が出現してしまったらしい。全て倒すことは出来たようだが、この有様だ。
数時間後、3人はそれぞれ報告書を纏め終えた。筆を置き2つの封にそれを入れる。
「勇音は総隊長の元へ行って下さい。ゆうりは浮竹隊長へお願いします。」
「承知しました!」
「畏まりました!」
十三番隊へ向かうのは死神になってからは初だった。海燕さんがついに副隊長になったなんて話も聞いている。とてもおおらかで人望の厚い彼なら上手くやっているだろうな…。
これから向かう先の事を考えながら四番隊隊舎を歩いていると前から先程治療を手伝ってくれた男の子がゆうりの存在に気付くなり駆け寄ってくる。
「あっ…あの!!」
「さっき手伝ってくれた子ですよね…?」
ゆうりが足を止め首を傾げる。とても気弱そうな男の子は若干俯き加減で黙ってしまう。呼び止めたはいいが、言葉が上手く出てこない。そんな彼を察してか、ゆうりは少しだけ横から顔を覗かせ優しく問いかけた。
「…君、名前はなんて言うの?」
「えっと…山田花太郎です…。」
「花太郎くんね。どうしたの?」
山田と名乗った男の子は再び間を開けると突然弾かれたようにパッと顔を上げる。その瞳は輝いておりまるでゆうりを尊敬しているかのような眼差しだ。
「…僕、初めて染谷さんの回道を見せてもらいました!あんなに素早く、広範囲で治療が出来るなんて…。」