第4章 死神編【前編】
「勇音、貴女は直ぐに最重傷者を特別治療室に運んで下さい。私が治療します。」
「はい!」
「その他重傷者はゆうり、お願いします。」
「分かりました!」
「軽傷者は空いている者で各自取り掛かるように。」
「「「はい!!」」」
ゆうりが四番隊に入隊してから半年程経った今日、隊舎内は随分と慌ただしかった。現世から戻ってきた死神達が虚の襲撃により多数の負傷者を出したのだ。運ばれてきた重傷者は施術用のベッドへ運ばれる。
「出血が多いですね…すみません、彼らの血液型を調べて輸血の準備を行って下さい。」
「了解しました、染谷五席!」
重傷者は3人居たが呼吸は有る。しかし傷が多かったり、深手を負っていたりで出血が酷い。素早く迅速に行わないと命を落とす事になるだろう。ゆうりは意識を集中させ、掌に霊力を込めると優しく淡い黄色の光が1人の身体を丸ごと包む。みるみる内に傷口が塞がり、痛みの無くなったらしい隊士の眉間の皺が取れた。荒かった呼吸も少しずつ落ち着いていく。
「はやい…。」
「見てないで、終わった人から輸血を始めて下さい。」
「はっ、はい!」
治療の過程を見ていたタレ目の男の子はゆうりの言葉に体をピンと張り輸血パックの支度を始める。それでも彼女の回道が気になって、視線を奪われた。
そもそも、傷口のみ霊力を充てるのは分かるが人ひとり丸ごと包み込むなんて相当調整が難しい上に消耗する筈なのに。この人は平気な顔でそれをするのかと思うと強烈に憧れの感情を抱く。
それから手早く残り2名の治療を終えたゆうりは、輸血パックと繋いだ点滴針を刺す。呼吸は安定、特に問題なさそうで肩の力を緩める。
「大丈夫そうですね。皆さんありがとうございました。私は卯ノ花隊長に報告をして来るので、経過観察をお願いします。」
隊士数名を残し、ゆうりは卯ノ花と勇音の居る集中治療室へ足早に向かう。どうやらあちらも必要な処置は終えたようで、二人共治療室の外にいた。ガラス張りになった部屋を見てみると、何本か点滴や輸血パックが繋がれており呼吸器が充てられている。
「卯ノ花隊長、重傷者3名は無事治療を終えました。勇音副隊長もお疲れ様です。」
「お疲れ様です、ゆうりさん。」