第11章 秀吉のぼやき②
「はぁ〜、あーいう事は天主でやってくれ」
思わずぼやく。
暫くして信長様が広間から出てきて目が合う。
「何だ秀吉、何か言いたげだな」
「いえ、何も」
「夜の軍議は手短にな」
そう言って、ご機嫌で信長様は去って行った。
その後にアヤが広間から出てきた。
顔を真っ赤にして何やら呟いている。
「アヤ、心の声が出まくってるぞ」
アヤに声をかける。
「えっ?あっ秀吉さん」
更に頬を赤く染めてこっちを見る。
「廊下は静かに歩けよ。まぁお前の気持ちも分かるけど」
うんうん、お前も大変だよな。
「うっ、ごめんなさい」
俯くアヤ。やっぱり変だ。
「お前、この一週間で何があった?」
聞かずにはいられない。
「何って何?」
「いやっ、なんて言うか、お前の信長様への態度が柔らかくなった気がして」
「えっ?」
どうして分かるのかと言いたげな表情で目を丸くして驚くアヤ。本当に分かりやすい。
そうか、お前も信長様の事を。
「まぁ、最初はお前も戸惑ったと思うけど、信長様を受け入れる気持ちになってくれたんなら俺は嬉しい。今回の視察だって、信長様が視察先で女に興味を示さなかったのも俺は初めて見たし。それだけお前に惚れてるってことだろ?」
「っ.........」
アヤは言葉に困った様に俺をただ見つめる。
こーいうとこ、可愛いんだよな。
「信長様を頼むな。俺の惚れ込んだ大切な方だ。お前なら任せられる」
可愛すぎて、アヤの頭をくしゃくしゃっと撫でた。(信長様が見ておられたら殺されるかもしれない)
信長様とアヤがその夜、思いを通わせあったのは、次の日の朝、皆の知るところとなる。
アヤが朝餉に来なかったからだ。そして信長様は何だか艶々しておられ、とても上機嫌だった。