第11章 秀吉のぼやき②
その後、あんなに信長様を睨んでいたアヤは、恥ずかしがりながらも、花が咲いた様な笑顔を見せて信長様を見つめている。
信長様は、とにかく甘い。
アヤに甘々だ。
そして所構わずベタベタベタベタ・・・・・
いつだったか、急に休みを取ると言い出し、アヤとお忍びで城下町へと出かけて行った。
二人とも町人の格好に扮していたが、俺はバレていたと思うぞ。
あの日、急な予定の変更に俺がどれだけ振り回されたか。
帰ってきた二人に説教している間も、あの二人は指を絡める様に手を繋いでいたのがこの目に焼き付いて忘れられない。
アヤの存在は、確かにこの城内の雰囲気を変えた。いつもピリピリした空気が漂っていたが、今は柔らかく、穏やかだ。侍女や家臣達への些細なことでの咎も無くなり、みなアヤに感謝している。
だがやはり、一番変わられたのは信長様だ。
あのお方が、国取り合戦以外に夢中になるものに出逢うとは思っていなかった。
あらゆるものからアヤを守るように、包み込むように抱きしめている信長様を見ていると、男として羨ましい気持ちになるし、そんな相手に俺も巡り合ってみたいとも思う。
でもやっぱり、人目は気にして欲しいよな。
アヤが天主で過ごす様になってからは更にお声がけするのが大変になったしな。
「はぁ〜毎朝毎朝、何気ないフリも辛いよなぁ」
秀吉のぼやきはまだまだ続く。