第2章 棘
「やっばーい」
昨夜遅くまで針子の仕事に打ち込んでいた私は、寝坊をしてしまい、急いで広間へと向かっていた。
戦国時代の人々はとても朝が早い。
アラームが無いと起きられない私は、まだこれには慣れることができない。
信長様が城内にいる時は、この城に詰めている他の武将達も、広間にて朝餉を一緒に食べる事になっている。
遅れると、また様々な仕置を夜にされる事になるので、なるべくそれは避けたい。
「いっ............たっ」
急いで走っていた私の足の裏に激痛が走る。
激痛の走る足とその周辺を見ると、廊下の床の一部がささくれ立っており、それが私の足に刺さったらしい。
「いったー、もう最悪」
今刺さった棘を抜いている暇はない為、私は足を引きずって、ぼやきながら広間へと入った。