第73章 来年の今頃は 〜お正月sp〜
「えっ、本当ですかっ!」
「ああ、本当だ。これで日ノ本が漸く一つに統一される事になる」
「っ、おめでとうございますっ!」
ここまでの道のりがどれほど大変だったのかを知っているから、この報告は本当に嬉しい!
信長様の膝の上で抱きついて喜びを伝えると、湯が豪快に跳ねて信長様の髪と顔を濡らした。
「あっ、ごめんなさい」
濡れた顔を同じく濡れた手で拭うと、その手を取られ見つめられた。
「っ、」
顔が近づいて来る。
「……」
目を閉じると唇が重なり、ちゅ、ちゅっと音を立てて何度も啄まれた。
「っ、ん」
口を僅かに開いて深い口づけを求める。
舌と舌が絡み合い唾液が絡み合う。
「う、…ん、」
信長様の手が私の胸を掴み形を変えれば、自然と声が漏れて信長様を欲してしまう。
けれど、
「アヤ、話はまだ終わっておらん」
熱くなりかけた私の唇を離して、信長様は話の続きをし始めた。
「これを機に、居城を大坂に移す」
「え?」
またもや驚きの発言が飛び出した。
「居城をって、信長様が…大坂に住まわれるって事ですか?」
「そうだ」
「そう…ですか………」
今回、急に二人きりで旅行に行こうと言った理由も、来年は家族でここには来られないって言った理由も分かってしまった。
「いつ…ですか?」
「既に数年前から築城を始めておる。天主と御殿が今秋には完成するゆえ来年の正月は大坂城で祝う事になるだろう」
「そんな早く?そんな……」
カルチャースクール仲間の姫から聞いた事がある。
大名が城を移す時、奥さんや子供は連れて行かない事があるってことを。
そんな事が自分に起こるとは思ってなかった私は、現代で言う単身赴任みたいなものかなぁなんて気軽に思ってたけど、
「じゃあ来年からは別々ってことなんですか?」
そんな事実、受け止められる訳ないっ!
「信長様と離れるなんてわた、っふがっ!」
涙目で離れたくないと訴える前に長い指が私の鼻を摘んだ。