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恋に落ちて 〜織田信長〜

第73章 来年の今頃は 〜お正月sp〜



「ふがっがっ!」(何するのっ!)

フルフルと首を振って鼻の指を払うと、今度はデコピンをされた。

「痛っ!っなにするんですかっ!」

「貴様がたわけたことを言うからだ」

「私のどこが、ッイタっ」

またもやデコピン。

「なっ、暴力反対っ!」

(痛くはないけど、どうしてこんなことするの?)

涙目で信長様を睨むと、それ以上の睨みを返されビクっと肩が跳ねた。

「何をどう勘違いしておるのか知らんが、大坂へは貴様も子供達も共に行くに決まっておる」

「え?…ほ、本当ですか?」
(単身赴任じゃなくて?)

「当たり前だ」

心底呆れたと言わんばかりの顔が私の頭をくしゃっと撫でた。

「……よ、良かったぁ〜」

力が抜けて、そのまま信長様の胸に倒れるようにもたれた。

「貴様のその俺を悪い方に疑う癖をいい加減どうにかしろ」

ぴちゃんっと、今度は水鉄砲攻撃。

「っ、ごめんなさい。だって、居城を新しくする際、正室は元の城に残し守らせるみたいな例があるって事を聞いた事があったので…」

「そう言った例が無いわけではない。政略結婚で結ばれた者同士、必ずしも良い関係が築けているわけではないからな」

信長様の胸にもたれる私の顔を、信長様は優しく撫でた。

「和睦を成した後は、本格的にこの日ノ本を一つに束ねる為の話し合いの場が増える。となると政の中枢はどうしても朝廷に近い京や大坂となる。今までのように行き来をしていては貴様との時間を取る事は不可能だ。であるなら貴様らを連れて城ごと移動すれば良いだけのこと」

「家族のために、お城を?」

「貴様が側におらねば俺は眠る事ができん」

「私だって、信長様がいないと朝も起きられません」

「ふっ、母となっても朝に弱い所は変わらんからな。手の掛かる奴だ」

ちゅっと、額に軽い口づけが落ちる。

「信長様の意地悪も変わってません!」

「痛い」と言わせたくて、信長様をぎゅーーーっと力一杯抱きしめたのに、その腕はいとも簡単に剥がされ体をヒョイっと持ち上げられると、足を割る形で信長様の上に座り直させられた。

「っ、」

この後の自分がどうなるかが分かり、私の熱は急速に上昇する。

「今年もそうだが、大坂に行けば暫くは休み返上となる。貴様とこうして二人になる時間も中々取れぬようになる」

私を見つめる目に熱が込められて行く。



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