第72章 夫婦の絆〜信長様誕生日sp〜
「アヤ、何をしている?」
キョロキョロと廊下を見回す私に光秀さんが不審そうに声をかける。
「あ、いえ、何でもありません」
もしかしたらこれはドッキリ作戦みたいなやつで、私がエロ襦袢に気づいた途端に信長様が部屋に入ってきて驚かせてくれるんじゃないかって思ったけど、どうやらそうではないらしい。
一瞬差した光はあっという間に消え去り、私はトボトボと元の位置に戻って襦袢を手に取った。
(これは私のお店の品ではない)
自分のエロ襦袢ショップで扱っている品ではないかと確認するも、違うことが分かる。
「私のお店でもこのような品は扱っておりますし、まずどうしてこれが証拠になるんですか?」
類似品を作ることなんて簡単にできるし、これを例え信長様から貰ったのだとしても、子どもを作ったと言う証拠にはならない。
「あら、アヤ様ならご存じでございましょう?信長様が夜の営みを盛り上げる為にこの様な艶襦袢を好まれると言う事は……」
「そうなのか、アヤ?」
悔しくて見れないけど、きっと光秀さんの口角は楽しげに上がって私に聞いているのだろう。
「夫婦の事は秘密です。ですが艶襦袢の事は私がお店を出した時から噂されていた事なので誰もが知っている事です」
そう、エロ襦袢のお店を構えた元々の理由はそれだもの。そんな事、安土の人なら誰だって知ってる。(夫婦の趣味の様に思われていて恥ずかしいけど…)
「私は信長様の事を信じていますし、あなたの言葉を信じることはできません。その子を連れてお帰りください」
信長様がらみのこう言った話にはもう惑わされないって決めている。
「お待ち下さいっ!私は嘘は言っておりません。その襦袢をよく見て下さいっ!」
女性は帰る気はないとばかりに食い下がる。
「もう十分に見ました」
と言いつつもう一度手に取りよく見てみると……
「これ…異国の布で作られてますね……」
この時代の日本にはない手触りに、外国からの布で一点物の高級な襦袢だと分かる(エロ仕様だけど..)
「はい。信長様がわざわざ私のために異国から取り寄せて作って下さいました。俺の女だと分かる様にと言って、家紋も入れて下さいました」
「え、家紋……っ!」
背縫いの中央を見ると、織田家の家紋が確かに入れられている。