第72章 夫婦の絆〜信長様誕生日sp〜
「お前はあっちだ」
光秀さんに上座へ座るよう言われ、そこへ行き腰を下ろした。
「お待たせしてごめんなさい」
見知った顔かどうかを確認しながら女性へ声をかけた。
(知らない人だ)
「アヤ様、お初にお目にかかります。私は夏と申します」
女性は軽く頭を下げた後、名を夏(なつ)と名乗り、抱えていた赤ちゃんを畳の上へとそっと置いた。
(可愛い。うちの紗菜と同じくらいかな?)
「この子は私と信長様の間に生まれた子です。どうかこのお城で信長様の子としてお育ていただきたく連れて参りました」
「………」
(ん?今なんて………?)
「女…自分が何を言っているか分かっているのか?」
言葉を理解しきれていない私に代わり、光秀さんがその女性に質問をした。
「はい。もちろん理解しております。この子は私と信長様との間に出来た赤子でございます」
女性は再び理解不能な事を言った。
「その赤子が織田信長様のお子だと言う確たる証拠はあるんだろうな?」
「はい。ございます」
女性は光秀さんの問いにそう答え、彼女の横に置いてあったたとう紙を私の前に出した。
「?」
「俺が見よう」
二人のやりとりをただ無言で見つめることしかできない私の代わりに、光秀さんがそのたとう紙を開いていく。
その動作がスローモーションのように見える。
頭がぼんやりとして、二人の会話もまるで海に潜った状態で聞いている様に耳にははっきりと届かない。
この女性はなんて言ったの?
この赤ちゃんが、この目の前でとても愛らしく微笑んでいる子が信長様の子?
私と信長様の子じゃなくて、この女性と信長様の子なの?
それは一体どう言う事!?
「アヤ、しっかりしろ」
目の前が暗くなりかけた時、光秀さんの言葉で我に帰った。
「っ、光秀さん」
「これが証拠の品だそうだが、お前には分かるか?」
手渡された着物を受け取り恐る恐る広げると、
「これは……」
それは、誕生日になると必ず登場する例のエロ襦袢!
(あっ、もしかしてっ!)
ある事を思い立ち、私は立ち上がって廊下へと走った。