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恋に落ちて 〜織田信長〜

第71章 夢が見せる奇跡 〜年末年始特別編〜



「案ずるな、此度も安産に決まっておる」

「はい……」

この時代のお産は命がけだ。
お腹の中の子供がどんな状態なのか…、それは出産の時まで分からない。

吉法師の時は本当にするりと産まれてきてくれて、いっ時は安産の神様なんて呼ばれた事もあったから、今回も多分するりと産まれてくれると思う。
でももし、逆子だったら?
へその緒が首に巻き付いてたりしたら?

一人目の時はただ生むことに必死だったからあれこれ考えなかったけど、二人目となる今回は、生まれてくる子に何かあったらとか、出産が大変だったらどうしようとか、産み月が近づくにつれ色々なことを考えてしまって、自分で自分を不安にしていた。

「何があっても貴様の事は俺が守る。もちろん腹の子も吉法師も俺が守ってみせる。貴様は何も案ずる事なく子を産めば良い」

「はい、ありがとうございます」

向けられる力強い目を見つめ返せば優しく口づけられる。

この人の腕の中でいつまでもこうしていたい。

「……ふっ、アヤ見ろ」

唇を離した信長様は、目で下の方を見ろと促す。

「?………あ!」

見れば吉法師がお腹に顔を寄せたまま眠っている。

「ふふ、頑張って起きてましたけど限界だったみたいですね」

「そうだな。…俺たちもそろそろ寝るか」

「はい」

信長様は吉法師を抱き上げ隣の部屋へ寝かせると、次は私を迎えに来て除夜の鐘を聞きながら布団へ入った。


目覚めれば新年がやって来る。
そしてこの安土に来てもう五年が経ったんだ。

信長様の愛に包まれて幸せな日々の中、それでも時折思い出す家族の事…

(お母さん、私…もうすぐ二人の母になるよ)

お母さんは私を産む時、不安じゃなかったのかな……?

今会えたら聞きたい事が沢山あるよ。

信長様の腕の中でそんなことを考えながら、私は眠りに落ちた。





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