第69章 私の育った故郷では 〜信長様誕生日sp〜
信長様はその日の夕方に安土に戻って来た。
「信長様、お誕生日おめでとうございます」
親子三人で湯浴みを済ませた私たちは、天主で久しぶりの親子水いらずのお誕生日会を始めた。
「ちち、おめっと、」(父上おめでとうと言っている)
「おっ、また言葉が増えたな」
吉法師を膝の上に乗せ彼の頬を突きながら信長様は笑った。
変わらずだぁーーという言葉が多いけど、ここ最近は覚醒したかのように一語文、たまに二語文を話すようになってきた。
「私のお腹も撫でてくれるんですよ。ね、吉法師 、母のお腹には誰がいるんだっけ?」
私のお腹をぽんぽんとして見せると!
「あかたん」
吉法師は私のお腹を指差して答えた。
「そう、赤ちゃん、吉法師は兄になるんだよ。楽しみだね」
「だぁーー!!」
意味が分かっているのかは分からないけど、吉法師は両手を上に伸ばしてアピールをした。
「子の成長とは早いものだな」
「本当ですね。最初は知らない事だらけで大変でしたけど、この可愛さが全てを忘れさせてくれると言うか、全て癒されます」
「こやつは特によく泣いたからな。貴様との夜を何度邪魔されたか」
つんつんしていた指は、ふなふにと吉法師の頬を摘む。
「今はよく寝てくれるようになりましたよね」
不思議なことに、授乳をストップした途端全く起きなくなった。
「ああ、おかげで貴様を堪能できる」
ニヤリと私を見て笑うと、信長様はお酒をクイッと飲み干した。
「っ、だから二人目ができちゃいました」
嫌味とかではなくこれは照れ隠し。だって、何年経っても信長様の熱い視線は恥ずかしい。
「心配には及ばん、こやつの時は赤子がこれ程に手の掛かるものとは知らなんだが、次は俺も育休を取るゆえ、貴様は安心して子を産めば良い」
話は、上手い具合に育休の流れになった。