第66章 全てはあなたを喜ばせるため 〜信長誕生日sp〜
「あっ、ずんだ餅っ?」
「ん?何だそれ」
「あ、....そうか.....」
この名前はこの時はまだ定着してないんだ。
と言うか、
「これ枝豆でしょ?政宗が考えたの?」
もしかして、もしかする?
「ん?ああ、ただ塩茹でして食べるだけじゃつまらないだろ?反対に甘くしてみたんだ」
何という発想の転換!
そして今まさに私は、歴史的郷土料理の誕生に立ち会ったんじゃないだろうか?
「凄く美味しいよ。政宗の発想はいつも凄いよね」
「だろ?だからこれ、お前にやる。礼はそうだな、まぁここにしてもらおうか」
政宗は楽しそうに私に顔を近づけて、自分の唇をちょんちょんっと指で差した。
「もう〜、だから政宗の冗談は心の臓に悪いからやめてって言ってるでしょ!」
隙あらばすぐ口説こうとする政宗のこれは、挨拶みたいなものだと理解はしていても、ドキッとしてしまう。(イケメンは罪だ)
「俺はいつだって本気だ」
「はい、はい。じゃあこれで良い?」
吉法師を持ち上げ、政宗の頬にチュッとした。
「だぁーー」
「おい!俺にそっちの趣味はない」
「吉法師にだってないよ(多分)、赤子の口づけには癒し効果があるからそのお裾分け」
「何だそれ?まぁ、いい。にしても赤子ってのは不思議だな」
「ふふっ、そうでしょ」
「材料、どれぐらい必要なんだ?用意してやるよ」
吉法師の頬をつんつんする政宗は、本当にずんだ餅を譲ってくれるつもりだ。
「あ、うーん、いいや。これは政宗が斥候の人や何か他の機会で信長様に出してあげて」
こんな歴史的な瞬間物をもらうのは流石に気がひけるし、時間がなくても気持ちは込めたい。
「遠慮するな、時間ないんだろ?」
「うん。時間はないけど、他の甘味を思いついたからそれにする事にする」
「そうか?まぁ、行き詰まったらこれやるからいつでも言いに来い」
「うん。ありがとう政宗」