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恋に落ちて 〜織田信長〜

第66章 全てはあなたを喜ばせるため 〜信長誕生日sp〜



「えっと、小麦粉と砂糖は......ある。卵は.......これもある。乳製品は....この時代の人には余り馴染みがないから無理かなぁ....」

短時間で比較的見栄えも良いデコレーションケーキを作りたかったけど......この時代で生乳を手に入れるのは中々難しい。


「アヤ、何してんだこんな所で?」

「あっ、政宗!牛乳が欲しくて、ここら辺で牛を飼育してる所ってないかな」


「んっ?お前にしては珍しく焦ってるな。しかも牛かぁ、....俺の領地では開墾の為飼ってる農民をちょくちょく見るが、ここ安土では見かけないな」

「そうだよね。ごめんね急に.....」

牛より馬の方が重宝されるこの時代、ましてや牛を食す風習がないから飼ってる家なんてやっぱりないよね。


「デコレーションは諦めよう。卵と小麦粉と砂糖はあるんだから........あっ、シフォンケーキなら出来るかも?........いや待って.....ベーキングパウダーがないとダメだ.....」


ベーキングパウダーの代替え品は.....


「わーん、そんなの分かるわけないよー」

何だって気になればすぐにスマホで調べられる時代にいたんだもん、料理研究家のように次々とアイデアは浮かばない。


「それに、型も泡立て器もオーブンもないし.........」


「おい、大丈夫か?」

独り言を言いながら、吉法師を抱っこし台所をウロウロする私に、政宗は心配して声をかけてくれる。


「.......うん。信長様の誕生日のお祝いの甘味を考えてたんだけど、良い考えが浮かばなくて......」

金平糖なんて、作り方すら分からないし......


「なら、この甘味をお前にやるよ。口開けてみろ」

「な、何?」

「いいから、ほらっ」

何かを料理中だった政宗は、手にした緑色のものを小さくちぎって私の口に入れてくれた。

こんな所、信長様に見られたらお仕置きどころじゃないかもしれないと思いつつも、もぐもぐと口を動かすと....お餅の食感の中に、ほのかな甘味と枝豆の香りが広がった。


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