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恋に落ちて 〜織田信長〜

第65章 秀吉のぼやき⑤〜番外編〜



「その時に、俺の手先の器用さを褒められて、もっといろんな物を作ってはどうかと、俺が見たことも考えたことも無いような子供の玩具の図を描いて与えて下さり、その図を元に色々と作っていく内に、評判が評判を呼んで、こんな店を構える程になったんです」


「そうか、それは良かったな」

500年先の未来から来たと言うアヤならばそれも可能なのだろう。
勉強は苦手だったから、俺たちの事や歴史はあまり良く分からないと言ってはいたが、自分の持てる知識を惜しみなく人に与える事が出来るのは、アヤの人の良さの賜物だな。


「信長様と奥方様の期待に応える意味でも頑張れよ。もう、悪の道には戻るんじゃないぞ」


「へいっ。あの日、あの時、手討ちになっても仕方のねぇ俺を見逃して、しかもご飯まで食べさせて貰った恩は忘れてません。それに、俺もじきに親になるんです。悪さなんてしてられません」


「親に?と言う事は嫁をもらったのか。それはめでたいな。大事な時期だろうから大切にしてやれよ」


「へえ、その嫁のお腹も先日奥方様に撫でて頂いて...........安産の神様に撫でて頂いたんで、怖いものはねえです」


「そうか、頑張れよ」


興奮気味に話す与平から一つ玩具を買い、俺は店を後にした。

それにしても、先程の与平の言葉が気になる.......
(安産の神様とは、アヤの事を言っているのか?)

玩具を片手で遊ばせながら、俺は立ち止まって考える。

実は、この言葉を聞くのは初めてじゃない。

安土に戻る途中、身重の女性や乳飲児を連れた女性たちの口から、何度か”安産の神様”と言う言葉を聞いた。

てっきり神社仏閣の類だと思っていたが、どうやらアヤの事を言っていたらしい。


アヤは確かに、少し前に信長様のお子を産んだ。しかも元気な男の子で母子共に健康だと、戦地で受け取った文には書いてあった。

出産に間に合う形で信長様は安土に一旦戻られ、その後戦も休戦となった為、そのまま家族の時を過ごされているが、安産の神様は初耳だ。


「まぁ、城に戻ってアヤに聞けば分かる事だな」

信長様への挨拶と報告を終えたら、お生まれになった若君の吉法師様に会わせて頂いて、その後は城の者達に挨拶をして今日の予定は終了だ。


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