• テキストサイズ

恋に落ちて 〜織田信長〜

第65章 秀吉のぼやき⑤〜番外編〜



「久しぶりの安土だ......」

冬に入り中国攻めは一旦休戦となった為、正月は信長様の計らいもあって、自分の領地と城へ戻っていた俺は、そこでの休息と政務を終わらせ、久しぶりの安土に戻ってきた。


城下に足を踏み入れれば、そこは変わらず賑わっていて活気に満ち溢れている。


「やはりここは理想郷だな」

信長様が築き上げたこの豊かな城下町は、アヤが来たことによって平和な街づくりがなされ、その噂を聞きつけた商人たちが日々集まりどんどん栄え、留まる所を知らない。


戦が始まった後も幾度か戻っては来ているが、この土地を離れて間もなく一年が経ち、店の数も種類も増え賑わいを見せている。


「特に、子どもや赤子の物が多く見受けられるな」


玩具に着物など、様々な子供用品が目につく。
信長様にお子が、しかも嫡男が生まれた事が大きく影響しているのだろう。



「これは秀吉様っ!お戻りで?」

通りがかりの店先に並んでいる玩具を一つ手に取り見ていると、奥から見知った奴が顔を出した。


「お前っ!与平か?」

「へいっ、ご無沙汰しております。その節は随分と世話になりまして.....」

照れた表情でぺこっと頭を下げるこの男の名は与平。
こいつは札付きの悪で特に手癖が悪く、俺の財布を盗もうとした所を捕まえた、言わば盗っ人だった男だ。


「この店....お前が......?」

顔を見れば真面目にやっている事は分かるが、店を持てる程に出世をしているのは驚きだ。


「へぇ、最初はそこら辺に落ちてる角材なんかを削って作った玩具を路面で売ってたんですが、それがお城の奥方様のお目に止まりまして........」


「アヤか......、あいつは好奇心旺盛な奴だからな」

それは信長様の奥方となり、以前にも増して溢れんばかりの寵愛を賜っていても変わることが無い。(時にそれは信長様の悩みの種でもあるのだが....いや、安土の治安維持に役立っているとも言えるのか?)



/ 816ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp