第63章 妻に望むもの〜信長様誕生日sp〜
「わぁ、きれい」
お城は大所帯を賄う為、台所も広く常に沢山の料理人や女中さんで溢れてるけど、ここは数人が作業するにはちょうど良いスペースで、こじんまりとしていて動きやすそう。
わぁ、本当に新婚夫婦って感じがして来た。
「ふふっ、夕餉は頑張って作るので、楽しみにしててくださいね」
「楽しみにしておるが............アヤ、先程、俺の誕生日を祝うと言っておったが、貴様が俺にしてやりたかった事とは何だ?」
急な、信長様の質問。
「え?あの、疲れを癒せるようなご飯を作って、それを二人で食べて、信長様が心地よい時間を作って差し上げれたらな...と」
これだけじゃ、足りないかな.............
「俺も同じだ。貴様との時間を堪能したい。だから俺も飯を作るのは手伝うつもりだ」
「え、でもそれじゃ」
ゆっくり休んでもらえないんじゃ.........
「案ずるな、ただで手伝うとは言わん、貴様には、今日はこれを着ながら飯を作ってもらう」
そう言うと、信長様は袂から白い何かを取り出し私に渡した。
「?何ですか?」
絹で出来たその滑らかな手触りの白い布を開いて行く。
「これ..........エプロン?」
「そうだ、やはり知っておるか。えぷろんだ」
信長様は私の顔を見ながらニヤリと口角を上げた。
「えっと.......」
これを着て夕飯を作れって事かな?
でもこのエプロン........何だかメイドエプロンっぽいんだけど......
時代を超えて突然渡された西洋のエプロンに戸惑っていると、信長様の口からとんなでも無い言葉が飛び出した。
「佐助に聞いた。貴様の時代には、一糸纏わぬ姿の上に、このえぷろんを着て夫をもてなすと言う風習があるらしいな」
...........................えっ?
「なっ、何言って.....そんな風習ありませんっ!」
(佐助君、なんて間違った情報を)
「そんなはずはない。佐助に奴がもし所帯を持ったら、妻に何を望むかと聞いたらそう言っておった」
信長様は私からエプロンを取り上げて、私の体にそのエプロンを重ねて見せた。