第63章 妻に望むもの〜信長様誕生日sp〜
何だか、誰の誕生日なのか分からなくなって来た。
久しぶりに会った信長様はいつも以上に甘くて、私ばかり幸せにしてもらって良いんだろうか?
今回は、私がたくさんお祝いして喜ばせたいのに....
「あの、台所はありますか?私、少しですけどお料理作れるようになったので、ささやかですけど、二人で信長様のお誕生日を祝いたいんです」
お城ならともかく、二人きりで過ごすのに、サプライズさせる事は難しそうだから、もう打ち明ける事にした。
「貴様はそう言うと思っておった。行くぞ」
男らしい笑みを浮かべ、信長様は私の手を引っ張って、台所へと連れて行く。
(...........あぁ、好きだなぁ)
繋いだ手の温かさに胸がトクントクンと波打つ。
小学生の頃、大人は恋をしないのだと思ったことがある。
私は四年生の時に隣の席になった男の子が話していて楽しくて、今思えば初恋で.....
学校に来るのが楽しくて嬉しくて、席替えで離れた時は悲しくて........。ただそれだけだったけど、教壇に立つ先生は今思えば若かったけど、あの頃はとても大人に見えて、自分が思うような恋する気持ちにはならないんだと思っていた。
だけど、きっとあの頃の先生とあまり変わらない歳になり、旦那様と手を繋ぐことがこんなにも擽ったくて、ときめくなんて思っても見なかった。
恋に年齢制限はない。何歳になったってときめく気持ちは無くならない。
私は人生最後の日までこの人にときめいているに違いない。
「ふふっ」
「何だ急に?」
「何でもありません。幸せだなぁって」
手を繋ぐだけでもこんなに嬉しいなんて、信長様にはきっと分からないんだろうなぁ、なんて思いながら私達は台所へとやってきた。