第63章 妻に望むもの〜信長様誕生日sp〜
「ここは、貴様と俺の別宅だ」
「別宅って?」
「贔屓にしておる商人が愛人との住まいとして建てたのが奥に見つかり、住めなくなったから買って欲しいと言われてな、聞けば湖の望める温泉付きの一軒家だと言うので、貴様との別宅として買う事にした」
「何だか、すごい理由ですね」
愛人に家とかマンションとかって、現代でも聞いた事があるけど、この時代もそんな事があるんだ。
「俺も初めて来たが、一通りの物は先に揃えさせておいたゆえ、数日過ごすには不自由はせん筈だ」
キィーと、重厚な作りの門を信長様が開けると、
「わぁ〜!」
二人で使うには立派過ぎる建屋の向こうには湖が見えていて、その周りには見事な庭園が広がっていた。
「気に入ったか?」
「はい。凄い素敵です」
愛人との逢瀬の為に建てたと言うところが引っかからないわけではないけど、それは信長様の事ではないし、それに二日間とは言え、二人っきりでここで過ごせるなんて、本当に現代での結婚生活を再現できる様な気がしてわくわくして来た。
「信長様、ありがとうございます。本当に嬉しい」
「貴様から貰う礼はもう考えてある」
「え?っん...」
ニヤリと笑い私の顎をすくいあげると、ちゅっと軽く口づけられ、
「馬を繋いで来る。庭でも見ていろ」と言って馬を繋ぎに行ってしまった。
いつもなら、礼は閨で貰うとか言うのに、もう考えてあるって、何だろう?
今日の信長様の行動は、久しぶりに会った時から全然読めなくて、???の連続だ。